連載711  岸田政権で「絶望未来」は深刻化 富裕層に続き若い世代まで続々と日本脱出 (完)

連載711  岸田政権で「絶望未来」は深刻化
富裕層に続き若い世代まで続々と日本脱出 (完)

(この記事の初出は1月11日)

 

移住先はいまや全世界に広がっている

 若ければ若いほど、行動を起こすべきときにきている。もちろん、ある程度の資産があれば、海外移住は難しくない。最近は、タイの「タイランドエリート」というような移住しなくともいいビザもある。これは、5年間で50万バーツ(約170万円)、20年間で100万バーツ(約340万円)で居住権を得ることができるので、若い層に人気だ。
 また、欧州各国も移住先として人気を集めている。ポルトガル、マルタ、スペイン、アイルランド、ギリシャなどは、投資や不動産購入により発行される長期居住ビザがある。
 最近、とくに人気なのがオランダで、有効な滞在許可を持ち、中断なくオランダに5年以上居住すれば、永住権が得られる。そうなると、選挙以外は、オランダ国民とほぼ同様の権利を持つことができ、雇用や起業、教育、職業訓練、社会扶助、EU市民が利用できる商品やサービスなど、すべてを利用できるようになる。
 昔は、留学・移住といえばアメリカが中心で、永住権の獲得もアメリカ中心だったが、いまは、対象地域が全世界に広がっている。
 若いときから、海外移住を目指すには、その資金がない場合は、次のようなステップがある。
(1)海外留学して現地で就職する (2)ワーキングホリデーを利用し、その後現地で就職する(3)日本企業に就職し海外駐在員となり現地で起業、定住を目指す (4)いったん日本で就職し、その後ノマドワーカーとして海外移住する(5)いきなり現地企業の求人にエントリーして移住する(日本企業の現地採用も含む)
 まだほかにも方法はあるが、最近、増えているのは、
(5)だ。シンガポールなどの転職エージェントの話を聞くと、たしかの海外就職、転職の希望者は年々増えている。

いきなり海外大学進学が意味するところ

 最近の傾向として、もう1つ挙げておきたいのは、日本の大学を捨てて、いきなり海外の大学に進学する高校生が多くなっていることだ。コロナ禍で海外留学の機会が閉ざされるなか、逆に、海外大学の進学率が上がっている。こうした子供の親たちは、日本の将来には、まったく期待していない。
 昨年の場合、広尾学園高校は、2020年の79名から、なんと212名まで海外大学合格者を増やした。広尾学園ほどではないが、渋谷教育学園、東京都立国際高校も合格者を増やしている。
 また、東大進学御三家の1つ名門・開成高校からも、東大を捨て海外難関大学に進学する生徒が、年々増えている。
 こうした現象は、途上国でよく見られることだ。途上国では、富裕層、エリート層、有為な層は、自分の子供を自国の教育に委ねることをせず、海外に送り出す。これと同じことが、日本でも起こるようになったのである。
 すでに、日本は途上国と言ったほうがいいかもしれない。
 なにを間違えたか、政府内では、2030年の冬季五輪を札幌に招致する計画が進んでいる。しかし、その2030年、日本がどれほど衰退しているか、政治家は考えたことがあるのだろうか。
(了)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

 

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