連載712 コロナ禍で深刻化するジェンダーギャップ
世界で最後の「女性差別大国」になるのか? (上)
(この記事の初出は1月18日)
表面的な取り繕いに過ぎない女性登用
昨年の自民党の総裁戦では、4人の候補者のうち2人が女性。高市早苗氏と野田聖子氏が立候補したので、自民党も変わると思えた。同じく、最大野党・立憲民主党でも党首選で西村智奈美氏が立候補し、その後、幹事長になった。
また、連合では芳野友子氏が女性で初めて会長に就任し、「ガラスの天井」は打ち破られたと報道された。
しかし、これら一連の出来事は、単なる世の中の流れに迎合しただけの話で、本当の意味での女性差別・蔑視が改善されたことを示していない。
東京五輪の組織委の森喜朗前会長が、不適切発言で辞任したことを忘れてはいけない。
「女性理事を選ぶってのは、文科省がうるさく言うんです。だけど、女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」という発言の根底には、日本社会が抱えている本質的な問題が隠されている。
これにフタをしたままでは、問題は改善されない。
森前会長の辞任後、「それなら会長を女性にすれば問題ないだろう」として、元五輪選手の橋本聖子五輪相(当時)が後任に指名されたが、これと同じことが、自民や立民の総裁選で繰り返されたにすぎない。
つまり、表面的な取り繕い、ゴマカシであって、日本社会が抱える「女性差別・蔑視」はなにも変わっていないのだ。
「コロナ不況」を「シーリセッション」と!
もう2年も続く「コロナ禍」で、女性差別・蔑視問題は忘れられようとしている。しかし、じつはコロナ禍の影響をもっとも受けたのが女性たちだ。
2021年6月、政府は2021年版の「男女共同参画白書」を公表したが、このなかで、この事実を指摘している。
2020年4月、日本も遅ればせながら緊急事態宣言が発令された。以後、就業者数は男女ともに大幅に減ったが、その数は、男性39万人に対し女性は70万人。圧倒的に女性のほうが多いのである。
非正規労働者が多い女性就業者は、2020年3月以降、13カ月連続で減少。勤務先の休業、雇い止めなどで、とくにシングルマザーの生活が苦しくなったと、白書は指摘。シングルマザーの完全失業率は、配偶者のいる母親と比べて約10倍も悪化しているとした。
しかし、白書は問題を指摘するだけに止まって、具体的な改善策は提示していない。そればかりか、女性が「コロナ不況」の影響をモロに受けていることを、「シーセッション」(女性不況)と名付けたのである。これは、「女性」(シー)と「不況」(リセッション)を組み合わせた造語だが、あまりにも無神経ではないだろうか。
(つづく)
この続きは2月25日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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