連載716  コロナ禍で深刻化するジェンダーギャップ 世界で最後の「女性差別大国」になるのか? (完)

連載716  コロナ禍で深刻化するジェンダーギャップ
世界で最後の「女性差別大国」になるのか? (完)

(この記事の初出は1月18日)

 

どこに行ってしまった「女性の輝く社会」

 国際労働機関(ILO)によると、日本の女性管理職の比率は11.1%で、調査した108カ国中96位。内閣府によると、研究者に占める女性の比率は16.9%で欧州・米州・アジアの主要39カ国のなかで最下位。列国議会同盟(IPU)によると日本の女性国会議員の比率は9.9%で、188カ国中165位となっている。
 こうしたことから、世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」(2021年版)での日本の順位は、156カ国中120位。アジア諸国のなかではフィリピンが17位だから、もはや絶望的に低い順位である。
 かつて安倍晋三内閣は、「女性が輝く社会」というスローガンを掲げた。「すべての女性が輝く社会づくり」を進めると宣言した。そうして、政策の目玉として挙げられたのは、「2020年までに官民の指導的地位に女性が占める割合を30%程度とする」ということだった。
 しかし、この目標はいつのまにかうやむやにされ、現在の岸田文雄内閣は、ジェンダーギャップの改善に対してなんの政策も示していない。

若い男性は男女平等など望んでいない

 昨年の11月、電通の社内シンクタンク「電通総研」が公表した「男らしさに関する意識調査」は、衝撃的である。
 なぜなら、若い男性ほど「女性活躍推進に反対」「フェミニズムが嫌い」という傾向が明らかになったからだ。男性3000人を対象に行った調査では、18~30歳の男性の4割以上が「フェミニストが嫌い」と答えたという。
 具体的には、女性に対する考え方を4段階で尋ねたところ、「フェミニストが嫌いだ」について「とてもそう思う」「そう思う」を選んだ18~30歳は約43%。31~50歳が約39%、51~70歳が約32%と、若い世代ほど高かった。また、「女性活躍を推進するような施策を支持する」は18~30歳が約63%、31~50歳約62%に対し、51~70歳が約79%で、中高年が若い世代を大きく上回った。
 つまり、若い男性ほど女性差別・蔑視する傾向が強かったのだ。
 さらに、「男の子が料理や裁縫、掃除、子守の仕方を教わるのは、よいことではない」との設問に「そう思う」と答えたのが18~30歳で24%、31~50歳で16%、51~70歳で11%。「男性は家事をしなくてもいい」に「そう思う」と答えたのが18~30歳で16%、31~50歳で11%、51~70歳で9%となっていた。この数字には、目を疑った。
 しかし、もっとも衝撃的だったのは、回答者男性の約半数が、「最近は男性の方が女性よりも生きづらい」と回答したことだ。
 いったい、日本社会はどうなっているのだろうか? 女性が生きづらいうえ、男性も生きづらい。本来なら、男女が協力して、新しい社会、幸せになれる社会をつくっていくべきなのに、まったくそうなっていない。このままいくと、日本は世界で最後に残る「女性差別大国」になるのは間違いないだろう。

(了)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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