連載741 ウクライナ戦争を読み解く(1)
一般メディアはなぜか無視、ウクライナ戦争の黒幕、闇組織の実態(上)
(この記事の初出は3月15日)
ウクライナ戦争は泥沼化し、この先、どうなるのかまったく見えてこない。現在の欧米メディアの報道を見ると、ともかくロシアが悪で欧米が善、ウクライナはロシアに一方的に侵略された被害者ということになっている。したがって、この図式に沿って、日本でも報道が行われている。
しかし、ウクライナは以前から「破綻国家」であり、東西の利害が衝突する係争地だった。そのため、裏人脈、闇組織などが入り乱れ、暗躍を重ねてきた。結局、ロシア国民もウクライナ国民もみな被害者で、この戦争はまったく無益と言うほかない。
(*今日から3回にわたり、ウクライナ戦争に関して情報を整理して配信します)
プーチンは「悪の帝国」の独裁者なのか?
ウクライナ戦争が起こってから、東西の情報合戦が激化。誰もが嘘をつき、どのメディアも偏向しているので、なにが真実かわからなくなってしまった。そのため、私は連日、ネット検索やメール交換などで情報を整理している。
コロナ禍が続いているせいもあり、外出もままならないので、こうするほかない。
それで改めてわかったのは、日本の一般メディアは欧米の主流メディアの報道を追随するだけで、真実の追求には無関心だということだ。欧米の主流メディアもまた、一部を除いて、この戦争の闇の部分について触れる気などないということだ。
プーチン大統領は、アメコミに登場するような「悪の帝国」の独裁者、暴君ではない。また、ある日突然、精神状態がおかしくなってしまったわけではない。
ウクライナ戦争には、そこにいたるまでの前史と闇の部分があり、それを理解しないことにはなにも語れない。
もちろん、ロシアによるウクライナ侵攻の責任はプーチンにある。こんな時代錯誤の力だけが頼りの現状変更政策では、新しい秩序は築けない。そんなことより、普通に暮らしているなんの罪もない人々の生活を破壊し、命さえ奪う権利が彼にあるわけがない。
とはいえ、ウクライナ戦争で再勃発してしまった「東西対立」(新冷戦)は、プーチンだけの責任とは言い切れない。アメリカ政府にも大きな責任があるからだ。
アメリカもまた「偽旗作戦」を行なってきた
過去30年にわたって、アメリカ政府の対ロ政策は、「ネオコン」(Neoconservatism:新保守主義)に牛耳られてきた。冷戦の勝利でソ連が崩壊した後も、アメリカはロシアを敵視し続けてきたのである。
ロシア敵視政策の具体例は、NATOの際限ない拡大であり、核条約の破棄であり、東欧へのミサイル配備であり、ウクライナを含む親ロシア政権の転覆などである。これらがなければ、ウクライナ戦争は起こらなかったと断言できる。
私は、「自由、人権、民主主義」に基づく世界をつくるというアメリカの政策に異論はない。しかし、そのやり方が、いまロシアがウクライナにしていることとなんら変わらないことには疑問を持つ。
思えばアメリカも、これまでさんざん「偽旗作戦」(false flag operation)を行なってきた。ベトナムでもイラクでも、アフガニスタンでも同じことが行われてきた。
実際、イラク戦争では「大量破壊兵器」(WMD:Weapon of mass destruction)は存在せず、戦争目的からして嘘だった。そのことを思えば、今回のことを、プーチンという独裁者の野望の実現、あるいは大ロシア主義の実行などと、軽く論評することなどできない。
(つづく)
この続きは4月7日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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