連載753  円安はどこまで進む? 現金を持っているだけで貧乏になる時代に! (下)

連載753  円安はどこまで進む?
現金を持っているだけで貧乏になる時代に! (下)

(この記事の初出は3月22日)

 

円安を放置し、あとは野となれ山となれ

 3月18日、日銀は政策決定会合を開き、量的緩和政策を続行することを決定した。不景気下のインフレ(スタグフレーション)が進み物価が上昇しているうえ、ウクライナ戦争が起こって世界経済が激変しているのにも関わらず、政策変更はしないというのだ。
 おりから円安が進み、1ドル118円まで円が下落したというのに、会合後の記者会見で黒田東彦総裁は、「円安は全体として日本経済にプラス」という考えを表明した。強弁にも程があるとは、このことではないだろうか。つまり、日銀は円安を容認し、「円安放置」を宣言したのである。
 しかし、いま進んでいる円安は、けっして日本経済にプラスにならない「悪い円安」である。円安が進めば、輸入物価の上昇を通じて原油や穀物など原材料コストの増加を招く。それは、めぐりめぐって企業収益を悪化させ、家計の負担を増大させる。日本経済をさらに衰退させる。
 このことを日銀は知っている。政府も知っている。しかし、なにもしないというか、できないのだ。あとは野となれ山となれしか、日銀にも政府にも選択肢はないのである。


量的緩和は経済対策ではなかった

 インフレ環境の下では、物価はどんどん上がる。となれば、貨幣価値が下がるので、金利を上げるのが金融の常識だ。ところが、日本の場合、国債発行額が大きすぎて、これができない。金利を上げれば、利払い費が一気に膨張し、財政がもたなくなるからだ。
 現在の円安は、アメリカが金融緩和を手仕舞いし、テーパリングに入ったことも大きな要因だ。アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は、3月15、16日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利の「フェデラル・ファンド(FF)金利」の現状の誘導目標0.00~0.25%を0.25ポイント引き上げ、0.25~0.50%とすることを決定した。これは、2020年3月から続けてきたゼロ金利政策の解除と、量的緩和の終了を意味する。
 となると、日米の金利差が開くので、当然のことながら、円を売ってドルを買う動きが強まる。円安は進まざるを得ない。
 しかし、日本としては、金利を上げられない。上げれば、国家予算の多くを国債の利払い費に充てなければならなくなる。これを逆から言えば、日本は、国債の利払い費を抑えるために、量的緩和をして金利をゼロにしてきたのである。
 アベノミクスの第一の矢、量的緩和は、景気を良くするために放たれたのではなかったのだ。


(つづく)

 

この続きは4月25日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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