連載764 ロシアに対する経済制裁は効かない 世界は分断され、インフレは進み、ドルまで崩壊する (上)
(この記事の初出は4月12日)
日々のニュースを追いかけて暮らしていると、大きな動きが見えなくなる。そうしてある日、気がついてみると、この世界がいままでと違っていることに愕然とする。
現在、進行中の世界的なインフレとウクライナ戦争は、まさに、そうした未来に私たちを連れていこうとしている。
ロシアに対する経済制裁など効かない。ウクライナ戦争は膠着し、世界は「欧米ブロック」と「非欧米ブロック」に2分される。そのなかで、インフレ、円安は進み、ドルによる世界支配も崩壊しかねない。
「ウクライナがかわいそう」一色報道
コロナ禍が起こる前、2020年以前の世界を思い出してほしい。アベノミクスは成功した。景気は戦後最長の好景気「いざなみ超え」が続いているなどと、メディアは言っていた。
それが真っ赤な嘘であることは、コロナ禍が起こってはっきりした。そして、ウクライナ戦争が起こってみると、日本の平和がいかに危ういものであるかも、はっきりしてしまった。
これまでの日本のメディア報道が、いかにいい加減で、近視眼的か、もう私たちは気づくべきだろう。そうしないと、生活は困窮し、資産を失うのは確実だ。
つまり、いま、日本のメディアが「ウクライナがかわいそう」一色に染まり、ロシアはいずれ崩壊する。近いうちに、プーチンは失脚するなどと言っていることを信じてはいけない。
また、ウクライナ戦争に便乗して、日本も安全保障を見直し、核武装を視野に入れるべきだなどという論調が幅を利かすようになったが、そんな論調を受け入れていると、日本はますます貧しくなるだけだ。コスト計算なし核武装論は無意味だし、まして「核シェアリング」などはもっと無意味だ。核は自前で持たない限り抑止力にならない。
なぜ、ロシア経済制裁は効かないのか?
まず、はっきりさせておきたいのが、ロシアに対する経済制裁は効かないということだ。経済制裁が効くのは、日本のような国、すなわち食料も資源もない国に対してだけだ。ロシアには豊富な石油、天然ガス、鉱物資源があり、小麦を筆頭にした農産物も十分にある。
つまり、ロシアは国内経済だけで十分にやっていける国家であり、その体制が専制・独裁であろうと民主主義であろうと、経済制裁には関係ない。
さらに、経済制裁といっても、抜け穴だらけで、制裁になっていないことを指摘しておきたい。すでに、このメルマガで何回か書いてきたので省くが、ドイツやイタリアが液化天然ガスを輸入して、その代金を払っている以上、制裁は無意味だ。むしろ困るのは、EUのほうである。
もう一つ、経済制裁参加国がほぼ欧米諸国だけで、中国、インド、ブラジルなどの大国、中東諸国、東南アジア諸国も参加していないことも挙げておきたい。これも、経済制裁が効かない大きな要因だ。
(つづく)
この続きは5月10日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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