連載788  これが最良シナリオ プーチンのロシアはどのように崩壊するのか? (完)

連載788  これが最良シナリオ プーチンのロシアはどのように崩壊するのか? (完)

(この記事の初出は5月3日)

 

カザフスタンはすでにロシアから離脱

 すでに、中央アジアの大国カザフスタンは、ロシアから離反した。
 今年の1月、カザフスタンでは長期独裁政権への不満とエネルギー価格の高騰から、全土にわたる暴動が発生した。慌てた政府はロシアに暴動鎮圧を要請したので、ロシアの平和維持軍がやってきた。
 しかし、暴動が収拾に向かうと、カザフスタン政府はわずか1週間足らずで、ロシアの平和維持軍を追い返したのである。
 カザフスタンの政治エリートたちは、いったんロシア軍を入れると、その後常駐されて、支配される。それを怖がったと考えられる。カザフスタンの北部は工業地帯で、ロシア系住民が多い。それを利用して、クリミア併合のようなことが起こり得ると判断したのだろう。
 実際、カザフスタンは、ロシアのクリミア併合を認めていない。ロシアのウクライナ侵略の口実となったドネツクとルガンスクの2つの「人民共和国」も認めていない。これは、旧ソ連諸国も同様だ。
 そのため、ロシアはカザフスタンに対して、小麦や砂糖の輸出を制限するという嫌がらせをした。しかし、カザフスタンはひるまず、 4月1日、EUに対して、「わが国がロシアに対する経済制裁の効果を突き崩すようなことはしない」と宣言した。つまり、制裁の抜け穴にはならないということだ。

 

ロシアを民主化して西側に組み入れる

 このようにして、プーチン政権が倒れ、ロシア連邦が崩壊すれば、その後のロシアは、米英とEUにより、民主国家につくり変えられるだろう。アメリカは冷戦でソ連を打ち負かしたにかかわらず、ロシアの内政に介入しなかった。
 第2次大戦の日本占領と大きな違いである。しかし、今回、ロシアが本当に崩壊するなら、そのときはロシアを一時的に占領をしてでも、国家体制をつくりかえなければならない。
 そうすれば、西(欧州)と東(日本、太平洋)から挟み撃ちにする「中国包囲網」は完成するだろう。そうして、最終的に中国を民主化し、この世界に自由と人権と民主主義という価値観を行き渡らせ、そのなかで自由な資本主義活動が行えるようにする。それが、覇権国アメリカの役割である。
 世界がそうなれば、日本にとっては願ったり叶ったりではなかろうか。日本は、2極に引き裂かれた世界ではうまく生きていけない。アメリカとも中国ともうまくやっていかなければならないという “曲芸”は大の苦手だ。
 ロシアが崩壊しないで、ウクライナ戦争が長引けば、世界は西側の民主ブロックと中ロによる専制ブロックに2分かされ、その外側にインド、ブラジル、中東諸国などあるという「無極化世界」になりかねない。
 それは、世界がジャングルになることだ。そこで通用するのは、唯一「弱肉強食の法則」( the law of the jungle)だけである。


(了)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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