連載789  今秋、日本経済に訪れるメルトダウン 「失われた30年」から「どん底の30年」へ (上)

連載789  今秋、日本経済に訪れるメルトダウン 「失われた30年」から「どん底の30年」へ (上)

(この記事の初出は5月17日)

 あらゆる点で、日本が今後衰亡していくのは確実だ。このことをすでに何度も指摘し、こうすべきだということを書き続けて来たが、最近はバカらしくなった。議論はするが、結局はなにもしない。それが、日本だということがつくづくわかったからだ。
 とはいえ、日本経済が持ちこたえられる限界が近づいている。おそらく、今秋には、かなり大変なことになっているだろう。
 人口減は続き、物価は上昇し、景気は落ち込み、日ごとに状況は悪化している。しかし、なぜか国民にもメディアにも危機感がない。まさか本当に危機が来るとは思っていないのかもしれない。

 

イーロン・マスク氏 「日本消滅」ツイッター

 世界一の資産家のテスラCEOイーロン・マスク氏(50)の先日のツイッターは、SNSでは大きな話題になった。しかし、大手メディアはほとんど取り上げなかった。
 イーロン・マスク氏は、「いずれ日本は消滅するだろう」とツイートし、加速する日本の人口減に対して警告を発したのだった。
 すでに私は、このメルマガでマスク氏の考えを取り上げている。4月5日配信の『なぜイーロン・マスクは「長生き」に反対なのか?』だ。
 マスク氏の考えは、「人類が直面する最大の問題は出生率の低下による人口減だ」というもので、少子化と高齢化が進むと「社会は停滞し、人類の進歩が止まる」ことを、彼はなによりも心配、懸念してきた。
 だから、先日の「日本消滅」ツイッターは、その最適・最悪な例として日本を取り上げたものだが、SNSでも他メディアでも「日本消滅」だけが一人歩きしてしまった。
 「消滅」は字義通りの「消えてなくなる」ということではない。日本が少子高齢化による人口減で、経済的にも文化的にもパワーを失うということだ。
 すでに、このプロセスに日本は突入し、「失われた30年」を続けている。10年前に誰が、日本人が韓国人、台湾人より貧しくなる日が来ると思っただろうか?

 

「こども家庭庁」をつくっても解決しない

 5月5日の「子どもの日」に、2022年4月1日現在の日本における子どもの数(15歳未満人口)が、総務省から発表された。その数は、過去最少の1465万人で41年連続の減少。総人口に占める子どもの割合は11.7%で、48年連続の低下だった。
 これは、じつは本当に深刻な問題なのだが、同じ発表が毎年繰り返されるので、もうその深刻さを、メディアはとりたてて指摘しなくなった。
 昨年、政府は少子化対策のために「こども庁」をつると言い出し、来年4月に内閣府の外局として発足することになった。しかし、その中身に関しては、これまで二転三転している。
 一つは「こども庁」ではなく「こども家庭庁」にするという名称の問題。続いては、幼稚園や義務教育などの学校教育関連の権限を文科省とどう線引きするかという問題。さらに、子どもの健康などでは、厚労省とどう線引きするかという問題もあった。
 結局、名称は「こども家庭庁」となり、他省庁と連携しながら対策を進めるということでまとまったようだが、これで少子化が解決に向かうとはとても思えない。
 なぜなら、少子化問題の本質は、家庭の貧困化にあるからだ。日本人は「子どもをつくらなくなった」のではない。「つくれなくなった」のだ。
 つくれば経済的に困窮する。それがわかっていて、子どもをつくり、子育てをする家庭があるだろうか。いまの若者は、結婚すらできない。それなのに、いまだに若者を責める高齢政治家がいるのには、あきれるほかない。


(つづく)

 

この続きは6月15日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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