連載793 今秋、日本経済に訪れるメルトダウン 「失われた30年」から「どん底の30年」へ (完)
(この記事の初出は5月17日)
「生活防衛」「節約生活」番組が増える
このような状況が続くと、今年の夏以降は、企業倒産、個人の自己破産者が増加するのは間違いない。おそらく、参議院選挙までは岸田政権はなにもしないから、そうなるのは間違いない。
ただし、なにもしないほうが、いまの日本経済は衰退しても延命できる。しかし、選挙後にバラマキを始めれば、状況は一時的に回復しても、悪化した病気にカンフル剤を打つのと同じで、最終的にさらに悪化する。
まだテレビはのん気に構え、相変わらずグルメや旅行、日本礼賛などのエンタメ番組を続けているが、じきに、深刻な不況を伝えざるをえなくなるだろう。
そうして、「生活防衛」「節約生活」一色になるのではないだろうか。いかにスマホ代、電気代、水道代などの公共料金をおさえるか、買いだめできるものは買いだめしていかに支出を減らすか、などが人気を集めるだろう。
場原理に反する政策は地獄への道
参議院選が近づけば、また政治家たちは「国民の暮らしを守る」「暮らしファースト」などと言って、バラマキ公約を口にするようになるだろう。
しかし、それは地獄への道だ。公的資金をいくらつぎ込んでも、経済が好転し、暮らしがよくなるわけがない。補助金によって上がった給料は、本当の給料アップではない。
「地獄への道は善意で舗装されている」という諺があるが、まさにその通りだ。
日本の政党は、自民、公明の与党から、維新、立民、共産などの野党まで、すべて社会主義政党である。自由経済、資本主義経済を守ろうなどとは思っていない。物価上昇に補助金で対処するなどすれば、それは自由市場、市場原理の否定だ。
モノやサービスの値段は、市場で決まる。需要と供給のバランスで決まる。給料も同じだ。消費者の要望や政治の力では決まらない。
スタグフレーション下でも、給料は上がることがある。それは、その人間の仕事の能力、技術がすぐれているからで、生産性が高いからだ。そうでない人間の給料は、物価上昇に追いつかずに相対的に下がる。
市「失われた30年」が「どん底の30年」に
日本は、本当にいつまでたっても変わらない。人口減が続くなかで借金ばかり積み上げていけば、その限界が訪れる。つまり、市場によって反乱が起こり、大きな調整局面がやってくる。
国債が暴落し、円安は途方もなく進み、物価は爆騰するだろう。「失われた30年」が「どん底の30年」に変わるときがやってくる。
改めて人口減に言及すると、この問題がいますぐ解消し、出生数が増えたとしても、その子どもたちが成人して働き、価値を生み出すようになるのは、20年も先だ。
たとえばウクライナ難民を何十万人も受け入れるなどいう移民政策を大々的に始めたとしても、もはや仕送りができるほど稼げなくなったこの国に来る移民などいないだろう。すでに、アジアからの出稼ぎは大幅に減っている。
そして、その代わりに、先が見える優秀な人材は、この国から出て行っている。
というわけで、最近の私は、愛すべき祖国に対して愛想を尽かしてしまった。もうなにかを提言する気も起こらなくなった。言いたいのは、イーロン・マスク氏の警告をきちんと受け止め、老人たち、とくに老害政治家や老害企業経営者に一刻も早くフェイドアウトしてほしい。これだけだ。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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