連載794 どうやっても変われない日本
バイデン大統領来日とフィンランドのNATO加盟 (上)
(この記事の初出は5月24日)
最近は、とことん、なるようにしかならない。日本は変われない、変わらないと思うようになった。そう思うと、腹立たしいことがなくなるから不思議だ。
今回は、そうした私の思いを、バイデン大統領の初来日と、フィンランドのNATO加盟問題に関して述べてみたい。現在、日本で議論されていることは、ほとんど上辺だけで、真剣さに欠けている。それに、日本人は、現状維持のバイアスが強すぎ、このままでいいと思っている人間が多すぎる。やはり、老人ばかりの国になると、こうなってしまうのだろうか。
成田、羽田ではなく横田基地に来日
本当に今年の天候はおかしい。今月も、五月晴れの5月だというのに、今日まで雨と曇りの日ばかり。ほとんど太陽が顔を出さず、気分がすぐれない。
国際情勢も国内情勢も天候と同じで、混沌として先行きが見えない。コロナも終わったのか終わらないのかわからないし、ウクライナ戦争も予想通りずっと続きそうだ。
そんななか、5月22日の日曜日の夕方、韓国訪問を終えたバイデン大統領が、横田基地に降り立った。その後、ヘリで六本木のハーディー・バラックス基地に向かい、米大使館そばのホテルオークラに入った。
アメリカ大統領の来日は毎回、成田、羽田などの空港、いわゆる“日本の表玄関”ではなく、米軍基地。このことが、日本がどんな国か端的に物語っている。
人柄がよくて真面目な子会社の社長
アメリカ大統領の来日とあって、23日のテレビは、バイデン大統領一色となった。バイデン大統領は、朝、御所を訪れ、天皇皇后両陛下と会談。その後、すぐに迎賓館に向かい、そこで待っていた岸田文雄首相と並んで、自衛隊による栄誉礼を受けた。
久しぶりの五月晴れ、快晴青空の下、日米両国旗と隊列の間に敷かれた赤い絨毯の上を歩く2人の姿を見て、これは、まるで、アメリカ本社の社長と現地子会社の社長ではないかと思った。
岸田首相は、高齢の大統領に気を遣いすぎるほど遣っていた。これはこれで、トランプ前大統領に媚びるだけ媚びた安倍元首相より、はるかにマシだった。
岸田首相は人柄においては、最近の首相のなかではいちばんだ。ビジョンや決断力はないが、真面目なことは確か。こういう人間の「おもてなし」を、アメリカ人は好む。
日本人も同じだ。人柄がよくて権力闘争に弱かったことが、いま、岸田首相の好感度を上げている。
なにも言わない、なにもしない「蛸壺戦略」
5月22日に公表された共同通信社の電話世論調査によると、岸田内閣の支持率は61.5%。4月の前回調査に比べ、2.8ポイント上昇していて、政権発足以来最高を記録した。
これを謎だと、一部の評論家は言っているが、私にはそうは思えない。
岸田首相は、「所得倍増」だの「新しい資本主義」だと言ってはみたものの、なにもしていないからだ。このなにも言わない、なにもしないことが功を奏している。
なにもしないことを「岸田の蛸壺戦略」と言っている人間がいる。うまいことを言うものだ。要は、蛸壺に閉じこもって議論になるようなことは言わない、しないということだ。
これでは、叩きようがない。不思議なことに、今年になってから、新聞、テレビコメンテーター、野党は、岸田政権に批判的なことを言わなくなった。
これでは支持率が下がるわけがない。しかし、本当になにもしなくていいのだろうか。いいわけがないと思うが—–。
(つづく)
この続きは6月22日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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