連載795 どうやっても変われない日本
バイデン大統領来日とフィンランドのNATO加盟 (中1)
(この記事の初出は5月24日)
政権支持率とマスク着用率は同じなのか?
岸田内閣の支持率をマスク率と同じではないかと、言っている人間もいる。これもまた、うまいことを言うものだ。
大体6割の人間は、なにも考えていなくて、ただみんながマスクをしているからマスクをしている。先週、厚労省は「屋外では会話が少なければ、マスク着用の必要はない」と、新しい見解を発表した。
欧米諸国に比べて遅すぎるという見方もあるが、このようにあいまいなことしか言えないのが、いまの政府らしい。
この政府見解を受けて、誰がマスクを外しただろうか?私が見るところ、今日まで誰も外していない。街行く人はみなマスクをしている。
みんなが外さないから外さないのだ。
結局、日本人はルールもマナーも関係なく、周りがする通りに行動する。だから、口うるさくない政府は歓迎で、物価が上がろうと、給料が上がらなかろうと、生活できるかぎりは、政権が悪いとは言い出さない。テレビなどが紹介する節約の知恵で乗り切ろうとするのだ。
おそらく、このままでは、夏の参議院選挙でもなにも起こらず、与党は大勝し、岸田政権は続くだろう。
韓国が先でも容認、新枠組みにも黙って参加
今回のバイデン大統領来日の目的は、日韓関係を改善し、中国包囲網を強化することにある。そのうえで、対ロシア制裁を確認し合うというものだ。そのため、バイデン大統領は、政権が代わったばかりの韓国を先に訪問し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)新大統領と会談した。
しかし、日本より先に韓国に行くのは、これまでなかったことで、日本政府としては耐えられないことである。それなのに、メディアはなにも言わない。韓国側の喜びようを、静かに伝えるだけだ。
日本人はもはや、韓国より自国が下になっても容認するようになったのかもしれない。
アメリカとしては、中国包囲網にロシア包囲網を加えて、アジア戦略を強化したい。そのために、TPPに代わる経済連携協定として「IPEF 」(アイペフ:インド太平洋経済枠組み:Indo-Pacific economic framework)というものをつくった。日米首脳会談後の記者会見で、バイデン大統領は、この枠組みに13カ国が参加することを表明した。
もちろん、日本と韓国は一も二もなく参加した。ただし、ASEAN諸国はシンガポールとタイをのぞいて、渋々の参加である。
「対米追従」が日本の基本的な行動様式
日本はなにも考えず、アメリカの言うとおりにする。これが、日本政府の行動様式(=対米追従)で、なにか独自でやろうとするとろくなことはない。
つまり、日本の政治、外交ほど、楽なものはない。
安倍元首相のように、本人の浅知恵からなにかを成し遂げようとすると、外交に莫大なカネがかかる。結局、安倍外交は、途上国、新興国に援助という名のバラマキを行い、ロシアには、いいように経済協力金を巻き上げられた。
バイデン大統領は、日本滞在3日目の25日には、来日したインドのモディ首相、オーストラリアのアルバニージー新首相とともに、「QUAD」(クアッド:日米豪印4カ国戦略対話:Quadrilateral Security Dialogue)の会議に参加する。
日本で行なわれるといっても、それはかたちだけで、本当の主催者はアメリカだ。岸田首相は、ただアメリカの言うことを聞いていればいい。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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