連載799 「フェイクほど拡散する」SNS時代。踊らされない、投資に失敗しない方法とは? (上)
(この記事の初出は5月31日)
最近つくづく思うのは、ネットに流されるフェイク情報を信じる人が本当に多くなったということ。新型コロナにしても、ウクライナ戦争にしても、実際はなにが正しい情報なのかわからない。
最近、行われたフィリピン大統領選挙にしても、SNSを駆使してフェイク情報を流し続けた独裁者の息子が圧勝してしまった。アメリカでは、トランプ前大統領のときから「Qアノン」だの「ディープステート」だのと、まさにフェイクニュースの全盛時代になり、それらに踊らされる人々が激増している。個人投資家たちも、こうした情報に踊らされ、投資に失敗している。
いったいなぜ、こんなふうになってしまったのだろうか?
見当違いのツイッター買収反対意見
先日、テレビを見ていて驚いたのは、『そこまで言って委員会NP』で落語家の立川志らくが、ツイッターを買収したイーロン・マスク氏についてどう思うか?と質問され、こう答えたことだ。
「ツイッターを買収して『ツイッターは自由にやらせるんだ』と。ツイッターこそ規制してほしいじゃないですか。芸能人とか政治家はみんな実名でやってんのに、一般の人は匿名で言いたい放題で。自由を与えると責任って問題が出てくるから、人の心うんぬんがちょっとわからないような、天才肌の人は本当はツイッターなんかは買収してほしくないですね」
要するに、彼は「ツイッターのようなSNSはもっと規制すべきだ」と主張したのだ。
私はこの意見には反対である。なぜなら、彼の意見は規制強化だから、反民主主義、反自由主義であり、自ら進んで自由を奪ってくださいと言っているに等しいからだ。もっと言えば「言論弾圧」に賛成ということだ。
としたら、誰がそれを決めるのか? SNSの運用会社か?
それとも政府か?
一部に、マスク氏はトランプ前大統領を復帰させるためにツイッターを買収したと考えている人がいるが、これも見当違いである。
「ネットの自由」は守らねばならない
マスク氏は、ボットや詐欺業者やスパムを排除する必要があることは認めているが、ツイッターが自らユーザーの言動を判断して規制を課すことはおかしいと言っている。
トランプ排除に関しては、当時、ドイツのメルケル前首相も反対した。トランプ前大統領は、ウソ八百、フェイクニュースをツイートしまくったが、それでも、排除(アカウント停止)は行き過ぎだった。
イーロン・マスク氏は、そうしたこれまでの経過を踏まえ、「私は言論の自由を守る」と発言してきた。彼は、ツイッターがユーザーの投稿を管理することは間違い、それは一種の「検閲」と考えてきた。そのため、買収後は規制を大幅に緩和する。それと引き換えに透明性を高めることをするとしてきた。
「透明性を高めることにより、もっとユーザーとの信頼関係を高められる」
これが、彼の主張である。
これは、ネットが誕生したときからずっと続いてきた「インターネット・フリーダム」(ネットの自由)を守る考え方だ。誰もが自由に情報を発信でき、誰もが情報に自由にアクセスできる。民主社会には欠かせない権利だ。
ただし、それが行き過ぎて、どうしていかわからなくなっているのがいまの世界である。しかも、それを、ロシアや中国のような専制国家が利用し、国民を洗脳している。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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