連載802  「フェイクほど拡散する」SNS時代。踊らされない、投資に失敗しない方法とは? (下)

連載802  「フェイクほど拡散する」SNS時代。踊らされない、投資に失敗しない方法とは? (下)

(この記事の初出は5月31日)

 

SNSにはまると「スマホ依存症」になる

 現代人の多くが「スマホ依存症」と言える。
 たとえば、「ラインの返信が来ないと気になって頻繁にチェックしてしまう」「食事中もスマホを見ていることがよくある」「歩きスマホをすることがある」「寝室やトイレにもスマホを持ち込んでしまう」「朝起きるとすぐスマホをチェックする」などをしていたら、間違いなくスマホ依存症だ。
 ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、テレグラム、ラインなどをやり出すと、依存症度が高くなる。これらSNSでは、常になにか新しいことを発信しなければいけないという不安を抱く人が多い。
 しかも、見てもらいためには、発信する情報が目新しいく、注意をひくものでなければならない。
 また、情報を受け取る側だけに徹しても、ツイッターやインスタグラムを見始めると、もっと面白いのはないかとスクロールが止まらなくなる。
 こうして、私たちは、判断力、リテラシーを失っていく。それは、専制国家の為政者や詐欺などの犯罪者にとって、じつに都合のいいことだ。

 

この世界には黒幕がいるという陰謀論

 SNS全盛時代になって、急速に広まったのが「陰謀論」だろう。たとえばアメリカでは「ディープステートがアメリカを操っている」「大統領選の結果は不正に操作された」などという言説が広まり、新型コロナのパンデミックが起こってからは、「コロナワクチンは人口削減が目的だ」という陰謀論が拡散した。
 こうしたことを信じる人間は日本でも多く誕生し、ワクチン反対運動家まで出現した。
 じつは昔から、さまざまな陰謀論があった。しかし、それは本や雑誌記事などで広まっただけの限定的なものであり、一部の人々の間で強固に信じられていたにすぎない。ところが、最近は多くの人間が、「イルミナティ」だの「ユダヤ」などと言い出す。
 陰謀論の特徴は、この世界には黒幕がいて、そうした人々の利益のためにこの世界は動いているということだろう。
 私が驚くのは、投資家の多くが陰謀論を信じて、「隠された真実」「ほかの人が知りえない情報」を知りたがることだ。彼らが信じていることの一つに、「ロスチャイルド陰謀論」があるが、最後にこのことにふれて、今回の配信を終わらせたい。

 

ナポレンの敗戦を知って英国債を逆売り

 全世界の金融を支配し、各国政府の政策まで動かしているのがロスチャイルド家だとされる。そのロスチャイルド家が莫大な富を築いたエピソードとして、ナポレオン戦争の天王山となった「ワーテルローの戦い」が知られている。
 この戦いで、ナポレンの天下は100日(いわゆる「100日天下」)で終わったが、ナポレンの敗戦をいち早く知ってロスチャイルド家が取った行動が、その後のロスチャイルド家の莫大な富を築いた。
 当時の英国ロスチャイルド家当主、ネイサン・ロスチャイルドは、ナポレオン軍のワーテルローでの敗北を、密使によって誰よりも早く入手した。そうして、英国国債を売りに出た。
 普通なら、英国・オランダ・プロイセン連合軍が勝ったのだから英国国債は値上がり確実だから買いである。しかし、ネイサンは一計を案じて、逆に売ったのだ。
 これを見たロンドンの投資家たちは、ネイサンにならって英国国債を売った。ナポレオンが勝ったと誤解したからだ。ネイサンの一計は当たり、国債価格は大きく下落した。
 それを見てネイサンは買いに入り、その後ナポレオン敗戦のニュースが入って値上がりしたところで売って、莫大な利益を得たという。
 これが、いわゆる「ネイサンの逆売り」で、ロスチャイルド伝説として日本でも広く知られている。


(つづく)

この続きは7月5日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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