連載807 株価はもう上がらない!
世界経済は試練の「長期低迷」へ (二の上)
(この記事の初出は6月8日)
この先もう株価は上がらない。このまま、株価のダウントレンドが続いていく。よくてイーブンはありえるが、それではインフレに食われてしまう。こうなった大きな要因は、世界経済の減速による長期低迷と、金融の量的引き締め(QT)にある。
コロナ禍でも株価がずっと上がってきたことに慣れ、いずれまた上がるだろうと思っても、そんな局面は当分訪れそうもない。そればかりか、株価バブルが崩壊することもありえる。
前回に続いて、今後、 株価と世界経済はどうなるかについて述べてみたい。
「1億総株主」は最悪のタイミングでは?
世界中で株価がダウントレンドに入ったのは、今年になってからである。それでもまだ、コロナ禍のなかで株価がイケイケで上がってきたことを忘れられない人間が多い。そのせいか、この先、下げてもまたすぐに反発する。そう思い込んでいる人間がいる。そういう人間は、「押し目買い」をいまも続けている。
なぜなら、NYダウ、日経平均とも、ここにきて持ち直し気味だからだ。今年だけに限って見れば、NYダウは5月19日につけた3万1253ドルが一番底で、その後じわじわ回復し、現在は3万3000ドル前後で推移している。日経平均は3月9日につけた2万4718円の一番底で、その後5月12日に2万5749円で二番底をつけたが、現在は2万7000円台後半にある。
しかし、今後もこうした小反発が積み上がっていくとは考えづらい。
そんな折、岸田内閣は「新しい資本主義」「所得倍増」を政策の柱として、「1億総株主」を言い出した。この政策は「新・骨太の方針」として、6月7日に閣議決定される。
今後、約1000兆円ある日本人の預貯金を投資に向かわさせようというのだ。
しかし、株式投資に限れば、いまは最悪のタイミングである。世界経済はコロナ禍で大きく後退したうえ、ウクライナ戦争でさらに傷つき、当分は回復が見込めない。インフレはスタグフレーションの様相を見せ、世界の中央銀行は、インフレ退治のために金利を引き上げ、金融の量的引き締め(QT:Quantitative Tightening)に入った。これまでの量的緩和(QE:Quantitative Easing)からの大転換である。
このインフレとQTが続く限り、景気は低迷し、株価は上がらない。
株価が上がったのは財政支援とQEのせい
それでもなお、いまだにコロナ禍なのに株価は上がったではないか。いくらウクライナ戦争があっても、インフレなのだから株価も上がるだろうという声がある。
しかし、コロナ禍なのに株価が上がり続けたのは、世界各国が大規模な財政支援(=給付金のバラマキ)をして、そのなかで中央銀行がQEを続けてきたからである。
一般的に株価は、経済成長と連動する。経済が成長すれば、企業の業績も好転し、それが株価を押し上げる。その逆で不景気になれば株価は下がる。
ということは、コロナ禍の間はロックダウンなどで強制的に経済成長が抑制されたので、株価は上がるはずがない。それなのに上がったのは、政府によるバラマキとQEによって生み出されたマネーが、大量に市場に供給されたからだ。
このことは、昨日の配信のメルマガで伝えたとおりである。よって、バラマキと緩和マネーがなかったら、株価はコロナショックによって大暴落したままになっていた。
そこで以下、なぜそう言えるのか? これまでの経過を具体的に振り返ってみたい。
(つづく)
この続きは7月12日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
→ 最新のニュース一覧はこちら←