連載814 円安、株安、賃金安の3重苦は止まるのか?
行動経済学の罠に落ちた日本(完)
(この記事の初出は6月14日)
コロナ鎖国を続けていると誰も来なくなる
さすがにいくらなんでも、もう政治家も国民も、これまでやってきたことが間違いだと気づくべきではないかと、私は思う。しかし、いまは、そんなことを指摘することも、こうしたらいいと提唱することも、バカバカしいと思うようになった。そんな気力はなくなった。
教育ひとつをとってみても、いったいいつになったら英語を話す教育、バイリンガル教育が始まるのだろうか。コンピュータ言語にしても、なぜ、早いうちから学ばせないのだろうか。
先進国と言われる国のなかで、日本の大学のランキングは著しく低い。アジアのなかでも、中国、シンガポール、香港などに負けている。つまり、日本の大学を出て日本企業に入る人材は、世界に比べて生産性が低いから、賃金は上がりようがない。これを無理やり政治の力で引き上げたらどうなるのか? 日本の政策は、やるべきことを間違えている。
それにしても、コロナ禍が終わり、世界が規制撤廃に向かっているのに、日本はいまだに鎖国政策を続けている。
6月10日から、コロナ禍で停止していた外国人観光客の受け入れが再開されたたが、添乗員同行のパッケージツアーのみを上限2万人の範囲内で受け入れるという、信じられない措置となっている。しかも、ビザと陰性証明がいる。また、添乗員は、マスク飲食を徹底しているかどうか監視する義務が科せられている。
となると、これは、北朝鮮と同じではなかろうか? まだ、開始されたばかりだが、これでいったい誰が来るというのだろうか?
今後の注目は6月15日の「FOMC」
市場が総悲観、国民マインドも総悲観、国民生活も総悲観のなか、今後の注目は、6月15日(水)に開かれるFRBのFOMC(連邦公開市場委員会)になった。
ここで、75ベーシスポイント(0.75%)の利上げが決まると、どうみてもNY株価はさらに下落し、つられて日経平均も下がり、円安も底なしになっていく。
ただし、ウオール街アナリストたちは、その確率を25%と予測し、株の暴落はないとするものの、厳重注意を警告している。
先週のNY株価の暴落は、「CPIショック」と呼ばれた。これは、5月の「CPI」(米消費者物価指数)が前年同月比8.6%上昇と4月から伸びが加速し、1981年12月以来40年5カ月ぶりの高い伸びを記録したからだ。
そこで、もし次のFOMCで金利引き上げが本当に0.75%となれば、円安はさらに進む。135円から先は、1985年のプラザ合意以後、ほぼ「未知の世界」だから、なにが起こるかは予測できない。
わかっていることはただ一つ。もはや、対策などなく、日本政府は「無策」だということだ。無策ということは、国民はこれまでの「失われた30年」と同じ行動を繰り返すということで、日本経済はさらに衰退する一方になる。
日本政府はこれまで、意識しようとなかろうと、国民全員を守りながら等しく貧しくなろうという社会主義政策をとり続けてきた。
それは、国民が求めたことであるから、いまさら誰も責められない。アベノミクスにしても、それが単なるペテンだと一部識者もメディアも知っていた。
しかし、誰も真面目に指摘しなかったのだから、もはや手遅れである。それが嫌なら、さっさとこの国を出て、グローバルな日本人として生きるべきだろう。現在、インフレをどう乗り切るか、個人レベルで様々な対策が言われているが、国内にいる限り有効な手立てなどほとんどない。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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