連載817 デジタル庁ができてもデジタル化できず。
「デジタル後進国」はいつまで続く (下)
(この記事の初出は6月21日)
デジタルにおいても「丸投げ」は変わらず
デジタル化を進めるには、デジタルを学び、それを使い、それに精通しなければならない。デジタルに限らず、これは、どんな分野でも同じだ。
しかし、日本の組織、公官庁はそうなっていない。日本の組織、公官庁を仕切るのは専門家ではなく、ただ下から順次ポストを上がってきただけのジェネラリストである。
となると、デジタル化を進めるにあたって、彼らがなにをするかと言えば、それは「丸投げ」だ。
公官庁に限らず、民間の企業もいま率先して取り組むべきはDXだが、上はそれを「やれ」と下に命じるだけで、
「勉強して専門家になれ」とは言わない。つまり、「デジタル化推進室」などいうものをつくり、そこにそこそこの人材を集め、あとは外注する。つまり、「丸投げ」であって、これではデジタル化が進むわけがない。
デジタル庁がこれまでしてきたことは、まさにこれである。その意味で、デジタル庁は「デジタル丸投げ庁」だ。世界でDXが進んでいる国、デジタル化した企業を見れば、そのトップはみなデジタルに精通した人材である。日本だけが違う。
IT人材の不足と低給料がネックに
日本でデジタル化が進まない理由は、まだある。デジタル化をになうIT人材が不足していることと、ITエンジニアの給料が低すぎることだ。
現在、日本人の給料が低すぎることが問題になっているが、給料を上げるためには一刻も早くアナログから脱して、デジタルスキルを身につけ、生産性を上げなければならない。しかし、日本の場合、IT人材を比較的安い賃金で使うことができるので、いっこうに進まない。
経済産業省のデータによると、日本のIT人材の平均年収は、20代で413万円、30代で526万円、40代で646万年、50代で754万円である。一方、アメリカのIT人材は、20代で1023万円と、日本の2.5倍だ。30代になると、さらに上がって1238万円。ただ、30代がピークで、40代は1159万円、50代で1104万円と下がっていく。
なぜ、日米でこんなに違うのかというと、それは日本が年功序列、年功賃金を維持しているからだ。いまだに終身雇用制を守っている企業もある。とくに、公官庁はその典型で、このような組織では、個々人のスキル、能力に見合った給料が支払われない。こうしていまや、日本の優秀なIT人材は外資企業か国外に流れ、IT人材が欠乏することになった。
この状況を改善しない限り、いくらデジタル庁ができても日本のデジタル化は進まないだろう。
(つづく)
この続きは7月26日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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