連載835  女が逃げ出し男が余る 「超独身社会」が地方から日本を崩壊させる (完)

連載835  女が逃げ出し男が余る
「超独身社会」が地方から日本を崩壊させる (完)

(この記事の初出は7月5日)

 

“やりがいのある仕事がない”

 結婚に夢を持てない環境、地方特有の女性蔑視文化が背景にあるのはもちろんだが、もっと大きい理由は、前記したように、地方には女性がキャリアを活かせる仕事がないということ。とくに高知県の場合、それが顕著のようだ。
 天野馨南子さんの話は、次のように続く。
「生まれ故郷を出ていった女性たち2300人にアンケートを行ったところ、転出理由は“やりがいのある仕事がない” “職種の幅が狭い”との回答が圧倒的でした。
 ある女性は、児童養護施設で働きたいけれど、地元には適当な大学がないので仕方なく県外に進学、そのまま就職したと話していました。」
「未婚率上昇は少子化の主要因です。少子化で人口が減るにつれ、高齢者の支え手は減り、おひとり様は激増します。女性のほうが長生きですから、自分で稼いで老後を乗り切らなくてはなりません。国や自治体は表面的な婚活支援にばかり力を注がないで、根本的な原因究明と対策も講じるべきです」



根本問題は日本の「女性差別社会」

 こうして、人口減社会、独身社会の問題は、「女性差別」問題に行き着く。もう誰もが知っているように、日本は「世界経済フォーラム」が公表する男女の格差を測る「ジェンダーギャップ指数」で、156か国中120位である。
 この点において、完全な途上国、いやまったくの後進国である。
 この低順位の大きな原因は、女性の平均所得が男性より低いこと、管理職の女性比率が低いことなどにある。男女が同じ働きをして、ここまで格差が大きい国は、世界にほとんどない。これほど、女性の能力を認めず、バカにしている国がほかにあるだろうか?
 アベノミクスでは、 第三の矢である「成長戦略」においてもっとも重視するのは、「女性が輝く社会をつくる」ことだとされた。しかし、政府は口先だけでなにもしなかった。保育園を増やしたぐらいで、女性の労働報酬のアップにはいっさい手をつけなかった。現在の岸田政権も、この問題に関してはほぼなにもしていない。
 これでは、未婚率は上がり続け、故郷を捨てる女性も増え続けるのは間違いない。
 女性が働きやすい職場、自己実現できる環境を地方にもっと整備することこそ、本当の地方創生であり、日本経済の復活ではなかろうか。

 

地方だけでなく日本を捨てる女性たち

 ここまで将来が暗いと、“できる女性”たちは、東京のような都会に出ていくばかりではすまない。海外に出ていくことになる。実際、海外在住日本人はじわじわと増え続
け、女性の数も増えている。
 外務省の海外在留邦人数調査統計(2021年版)によれば、2020年にはコロナ禍に伴う入国制限で長期滞在者はここ30年で初めて減少したものの、永住者に関しては増え続けている。
 一部の研究調査によると、大卒・高学歴の日本人の3人に1人、海外在住経験者の2人に1人が海外移住を考えているという。その理由の第一は、将来不安だ。もっと端的に言うと、経済的な理由である。
「この国では能力に見合った報酬が得られない」「この国ではキャリアアップができない」「この国で働いて税金、年金を払ってもなんの見返りもない」などという声が、どんどん大きくなっている。
 こうした問題について、これまで何度も私は指摘し、こうすべきだと言い続けてきたが、最近は言い続けることに飽きた。政府はこの国を時代に合わせて変えていこうなどと、露ほどにも考えていないことがわかったからだ。
 今後、この国を変えていくのは、目覚めた女性たち以外にない。それに期待するほかない。今後、「男余り」はますます深刻化し、社会はすさんでいくだけになるだろう。
(了)

この続きは8月18日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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