連載841 またも「ジェンダーギャップ指数」最下位 「L字カーブ」が示す女性が輝けない日本(下)
(この記事の初出は7月11日)
G7はもとよりアジアでも恥ずかしい国に
トップ10はもちろん、G7諸国およびアジア近隣国と比べてみると、日本の状況が絶望的であることがわかる。2006年に「ジェンダーギャップ指数」が発表されるようになって以来16年間、日本は一貫して下位グループだ。
G7では、アメリカは27位、英国は22位、フランスは15位で、日本とは圧倒的な差がある。これでよく、日本を先進国の仲間として迎えていると思うと、本当に不思議だ。
G7より深刻なのが、アジアにおける日本の位置だ。同じ東アジアの韓国には2020年に抜かれた。すでに、1人あたりのGDPでも韓国に抜かれており、それを加味すると、日本の働く女性は、本当に報われていない。
これは、中国と比較しても言えることで、中国の順位は102位と低いが、女性の雇用と賃金においては日本より完全に上だ。
軍事政権のクーデーターにより、完全な男性支配社会になっているミャンマーが日本より上位ということも、恥ずかしい限りである。インドの順位はほぼ最下位で日本より下だが、そんなことはなぐさめにもならない。
なぜなら、インドではこれまで女性首相が誕生したことがあるが、日本はないだからだ。
なぜ日本は万年最下位グループなのか?
なぜ日本は、これほどまでに女性蔑視で、男女格差が大きいのか?
男女平等を進めてきた先進国と比較した場合、多くの国で実施されてきた「クオータ制」の導入がないこと。また、男女雇用均等法のような法律があっても、罰則規定がないことが指摘できる。
「クオータ制」では、意思決定が男性に偏る構造を正そうと、選挙の立候補者や企業の役員などに女性を一定数割り当てることにし、これを義務付けている。また、男女間の賃金格差是正に向けては、賃金差の公表や分析を企業に実施させ、格差が大きい場合には罰則が導入されている国もある。
ところが、日本では、「男女共同参画社会」を目指すとしながら、それは口先だけで、具体策がない。たとえば、2018年に選挙で男女の候補者数を均等にするよう政党などに促す「政治分野の男女共同参画推進法」が施行されたが、努力義務にとどまったままだ。努力を法律で決めても、ほぼ無意味である。
こうしたことの結果、ジェンダーギャップ指数のスコアの各項目のなかで、日本の政治分野における指数は最低に近い。先日、7月10日の参院選で女性の当選者数は過去最高になったものの、日本の国会議員の女性比率は衆議院とあわせて全体でわずか15%ほどにすぎない。
女性の賃金は男性の賃金の中央値の77.5
男女間の賃金格差に関しては、長年にわたって問題視されてきたが、法的に是正しようという動きは今日までほとんどない。
今年7月から、「女性活躍推進法」の省令改正で、大企業(301人以上を雇用する企業)は賃金差の情報公開が義務付けられるようになったが、これとて出発点にすぎない。
しかも、賃金額そのものではなく、男性の賃金水準に対する女性の割合を開示させ、その差を明確にするというもの。これを自社のホームページに掲載することとしているが、はたして効果があるかどうか。
日本の男女間の賃金差は、世界の主要国と比較した場合、信じられないほど大きい。「OECD」(経済協力開発機構)の2020年時点調査によると、日本は男性賃金の中央値を100とした場合、女性は77.5にすぎない。男女差は22.5ポイントである。
英国は12.3、ドイツは13.9、アメリカは17.7で、日本より大きいのは韓国の31.5ぐらいだ。
また、管理職に占める女性の割合の水準も低い。
内閣官房の各国比較(2021年時点)によると、アメリカの41.4%に対し日本は13.2%。一方で、日本の女性のパートタイム労働者の比率は39.5%にも上る。
EUは、この6月に、域内の上場企業に一定比率の女性を取締役に登用するよう事実上義務づける法案で大筋合意した。これにより、社外取締役で40%以上か、すべての取締役で33%以上を少数派の性別にすることになった。
共働きが多数派になった現在、男女間の賃金に差があることは社会的に許されない。また、意思決定に女性がほとんど参加できないということも公正さに欠ける。日本は、早急にこれを改めなければならない。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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