連載844  放置される温暖化、気候変動リスク 東京もニューヨークも水没の可能性がある!(中1)

連載844  放置される温暖化、気候変動リスク
東京もニューヨークも水没の可能性がある!(中1)

(この記事の初出は7月26日)

 

北極圏も30度超えでトナカイも水浴び

 私の娘の夫はフィンランド人だが、首都ヘルシンキでも気温が33度を超えた日々が続き、「こんなことはかってなかった」と驚いていた。
 ヘルシンキは北緯60度に位置する。日本の最北端、稚内は北緯45度。稚内より15度も北である。そんな北の街にも熱波が来るのかと思っていたら、最北端のラップランドでも7月5日に33.5度を記録したというので、本当に驚いた。
 ラップランドは北緯66度33分以北の北極圏に位置する。これでは、トナカイもサンタクロースもびっくりだ。夏バテしたトナカイがビーチや湖岸で水を浴びて涼んでいる姿は、もう珍しくなくなったという。
 例年のラップランドなら、夏の平均気温は15、6度~20度くらい。日本で言えば、春の気温である。
 それが、30度超えが1週間以上も続いたという。最高気温が34度になったのは過去1度だけあったという。しかし、それは1914年、100年以上前の話だ。

 

アメリカはほぼ全土で「華氏100度超え」

 そういえば、昨年、やはり高緯度に位置するカナダのブリティッシュ・コロンビア州リットンで、3日連続で40度超えを記録し、6月29日には49.6度に達したことが、大きなニュースになった。
 そこで、今年はどうかと思っていたら、北米もやはり猛暑に襲われている。ニューヨーク州では、7月20日から、高温注意報が出て、最高気温が華氏100度(摂氏38度)を超えた。この「華氏100度超え」は全米に広がり、テキサス州ではすでに6月から40度超えの日が何日も記録されている。
 そのため、テキサス州各地で過去最大の山火事が発生した。
 山火事と言えば、カリフォルニア州では毎年のように起こっていて、その都度甚大な被害をもたらしているが、今年もまた発生した。7月22日に発生した山火事は、ヨセミテ公園一体で、広がれば樹齢1000年を超える貴重なセコイアの木が絶滅してしまう可能性がある。
 『NYタイムズ』などの報道によると、現在、アメリカの人口の約2割が、「華氏100度超え」の被害にあっているという。
 このような世界的な異常高温と熱波襲来に対し、世界気象機関(World Meteorological Organization::WMO)のペッテリ・ターラス事務局長は、次のような警告を出した。
「ゆくゆくはこのような熱波が常態化し、さらに強烈で極端な事象が発生するだろう」
 つまり、今年のような猛暑は来年も続き、それが恒常化する。もはや、40度超えも熱波も異常ではない、日常事態と宣言したのである。

 

38度を超えると“危険注意報”が出る中国

 今年の日本の夏も異常だ。第一に、梅雨がほとんどなく、すでに6月中に35度を超える真夏日が連日続くという、私が生まれてから1度も経験したことがない夏になった。これでは、コロナも怖い、熱中症も怖いということで、外出は命がけだ。
 日本ばかりか、韓国も中国も猛暑である。とくに、大陸・中国の異常な夏は、豪雨と熱波が交互に襲ってくるので、その被害は測りしれない。
 中国南部では、5月の雨季(日本の梅雨に当たる)開始以来、豪雨が続き、各地で洪水と地滑りが発生し、福建省や広東省、広西チワン族自治区では何百万人もの人々が避難せざるをえなくなった。この間、華北は熱波に覆われ、気温は40度を超えた。中国の報道によると、河北省の3都市と雲南省の1都市の計4都市で、気温が44度に達したという。
 中国には「三大火炉」(三大ボイラー)と呼ばれる、夏の気温がもっとも高くなる3つの都市がある。重慶、南京、武漢の3都市で、いずれも内陸の盆地型の地域であり、これらの都市では気温が38度を超えると“危険注意報”が発令され、会社、学校は休みになる。
 この“危険注意報”は、数年前までそれほど多くなかった。しかし、今年は連日で、とくに南京はあまりの暑さに、日中戦争から第二次大戦時につくられた地下防空壕を涼を求める市民に解放したという。

(つづく)

この続きは9月6日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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