連載851 米景気後退、バイデン支持率急落・・・ 2024年トランプ再選なら日本は「悪夢」に!(完)
(この記事の初出は8月2日)
トランプ時代が再来したらどうなるか
トランプ前大統領は、これまでの言動を見る限り、「自由、民権、民主主義」など歯牙にもかけない人物だ。議会乱入事件を起こしたように、彼は民主主義の破壊者でもある。
したがって、彼が返り咲いた場合、西側先進諸国およびわが国が、現在の価値観を維持できるかが、もっとも懸念される。
アメリカはいま、前述したように、民主共和両党とも内部が混乱し、それとともに政治全体が混迷している。そのため、政権が変われば、外交路線も180度変わる可能性がある。
もしトランプが復活すれば、NATO、日米同盟などは軽視され、アメリカは世界に対して責任ある行動を取ることはなくなるだろう。トランプは同盟ばかりか、第二大戦後の世界の枠組み、IMFやWTOも無視するだろう。
そして、間違いなく、気候変動の「パリ協定」から再び離脱し、地球温暖化対策は遅れに遅れるだろう。
日本がもっとも懸念すべきは、対中国政策である。前回、彼は中国との対立を煽ったが、それは価値観からでなく、貿易赤字を減らすというだけのためで、台湾問題もそのためのダシに使ったに過ぎない。
トランプは、本気で台湾を防衛する気などなく、これは、日本に対しても同じだ。
もし、習近平がさらに折れて、大幅な貿易赤字解消を図ったら、トランプは中国と手を結び、台湾、日本を放置するのは確実だ。彼は以前から日米安保への不満を表明してきたし、「日本は自分自身で防衛しろ」と言い続けてきた。さらに、「アメリカに守ってほしければ10兆円払え」とも言った。北朝鮮に対しても、金正恩を「坊や扱い」する演出だけをして、韓国から米軍を撤退させることもほのめかした。
こうしたことを想起すれば、なぜ、安倍元首相がトランプにあれほど媚びへつらったのか、本当に情けなく思える。
アメリカが減速すれば世界はジャングルに
これまで何度も書いてきたが、アメリカが世界覇権を維持しようとしないなら、それは世界が「ジャングル」になることを意味する。「自由、人権、民主主義」は消滅し、国益追求だけの「帝国主義」に世界は逆戻りする。すでに、ロシアはウクライナでそう行動している。
「自由、人権、民主主義」と言っても、それを支えるのは経済力、軍事力である。したがって、アメリカの景気減速と政治の混迷は、自由世界の危機に直結する。
コロナ禍は収束しつつあるが、世界経済はいまだに立ち直っていない。そのなかで、アメリカはいち早く立ち直ると思われたが、現状を見る限り、そうは言えない。
NY株価はなんとか3万ドル以上の高値圏を維持しているが、企業実績を見ると、業績のいい企業は限られる、インフレ亢進で個人消費も落ち込んでいる。
この影響を、日本も大きく受ける。次の第三四半期で、アメリカのGDPははたしてどうなるのか? それによってアメリカも日本も、そして世界全体も大きく変わるだろう。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。