連載873 底なし円安の先にはハイパーインフレが!? 日本人自身が「資産フライト」(円売り)すれば…(完)

連載873 底なし円安の先にはハイパーインフレが!? 日本人自身が「資産フライト」(円売り)すれば…(完)

(この記事の初出は9月13日)

 

預貯金をすればするほどソンをする

 一般的に預貯金はもっともリスクが少ない投資である。元本は保証され利息が付くからだ。しかし、インフレが亢進するとなると、そうはいかない。
 逆にリスクとなり、預貯金は実質的に目減りする。さらに、ここに円安のような為替リスクが加わると、預貯金をすること自体がリスクとなる。日本円による預貯金は、円安が進めば、ドル換算した時点で大幅に目減りする。
 つまり、預貯金をすればするほどソンをすることになるのだ。ところが、それがわかっていても、なぜか、預貯金を続けるのが日本人なのである。
 総務省の家計調査などを見ると、日本人の貯蓄率(=預貯金÷可処分所得×100)は、平均16%となっている。つまり、働いている人は、その手取り収入の1割以上を預貯金に回している。しかも、円による預貯金だ。こんなリスキーなことはない。外貨預金が増えたといっても預貯金全体に比べれば数パーセントにすぎない。
 しかし、このことをメディアも専門家も、はっきり指摘しない。預貯金をしてはいけないなどと、誰も言い出さない。

ラオスの経済破綻は日本の明日の姿か

 日銀が金融緩和を続行している以上、日本は借金財政を続けるので、経済成長などできない。ただでさえ人口減で経済規模は年々縮小していく。
 これから生産年齢人口がどんどん減るというのに、増税でゼロ金利では、どんなビジネスも利益を上げるのは難しい。私は、奇跡でも起こらない限り、もはや2度と円高はやって来ないと見ている。
 インフレと通貨安が続くとどうなるかは、現在のラオスを見ればわかる。ラオス経済はすでに破綻し、通貨キープは暴落を続けている。インフレも亢進する一方で、6月のインフレ率は前年同期比23.6%、7月は同25.6%、8月は30.0%と、悪化の一途。人々の生活は逼迫し、首都ビエンチャンはクルマがほとんど走らなくなったという。外貨準備がなくなり、石油が購入できなくなったためで、多くのガソリンスタンドが閉鎖されているという。
 通貨キープの対ドル下落率は日本円どころではない。最近のレートは1ドル=2万キープだが、これは昨年の倍だ。つまり、価値は半減してしまった。
 そのため、人々はキープを受け取らす、タイバーツや米ドルが流通している。
 英経済分析機関「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」(EIU)は、今後4年以内にデフォルトを宣言する可能性が高い国としてパキスタン、ミャンマーなどとともに、ラオスを挙げている。アジアの国家のなかでは、すでにスリランカがデフォルトしている。
 日本はデフォルトはしないが、円の価値が半分になることは十分考えられる。


(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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