連載876 先進国から転落中の日本の「辺境、あるある」 (中2)

連載876 先進国から転落中の日本の「辺境、あるある」
(中2)

(この記事の初出は9月20日)

 

ともかく、日本はなにもかも安すぎる

 円安以前から、日本の物価は世界の先進国に比べて、大幅に安かった。日常用品が100円で買える、いわゆる「100均ショップ」は、日本だけにある希少な存在だ。ダイソーはいまや世界中に展開しているが、バンコクでもクアラルンプールでも、日本円で100円に相当する製品は一つもない。
 2019年3月、ダイソーはニューヨークのフラッシングにニューヨーク1号店をオープンさせた。この店の最低価格帯は、1.99ドル(約280円)である。いずれも、日本でいう「100均」とは名ばかりで、日本と同じ製品が2~3倍はする。
 物価が安いということは、後進国、途上国、貧乏国に共通する現象だ。主だった産業がなく、あったとしても生産性が低いうえ、生産物の付加価値が低いので人件費も安い。これが、物価安の原因とされるが、そうなると通貨も価値が低くなる。
 「安い日本」を象徴するのが、ファミレスの「ガスト」や「サイゼリア」だ。アメリカから来た留学生をこの2店に案内したら、すっかり気に入って、「こんなに安くていろいろなものが食べられるところはない」と、大喜び。以来、「ガスト」と「サイゼリア」の常連になった。
 現在のインフレーションは、賃金の上昇が追いつかないので「スタグフレーション」である。インフレーションの反対はデフレーションで、デフレーションのことをアメリカのエコノミストは「Japanification」(ジャパニフィキケーション)と呼んでいる。日本は、完全に辺境国扱いである。
 ともかく、ランチがワンコイン(500円)の弁当ですむなどということはありえない。日本のワンコイン弁当は、ニューヨークのデリカテッセンなら20ドルはするだろう。

いつまでたっても女性が輝けない国

 日本では、モノの価値以上に女性の価値が低い。価値という言い方はよくないが、ほかに言いようがない。女性は、男性と同じような働きをしても、男性の7割程度の賃金しか稼げない。また、社会の主導的地位からは排除されている。
 7月に行われた参院選では、女性候補者が過去最多の35人当選したことがニュースになった。しかし、それでも国会議員の85%強は男性であり、しかも、高齢者ばかりだ。
 英国では史上3人目の女性首相が誕生したというのに、これでは恥ずかしくて、外国人と“床屋政談”すらできない。
 世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」で、日本は毎年、最下位グループを独走している。2021年は120位。2022年は116位である。欧米の先進国は言うに及ばず、アジアのなかでも韓国、中国よりも低く、17位のフィリピンに比べたら、もう絶望的としか言いようがない。
 かつて安倍内閣は、「女性が輝く社会」というスローガンを掲げた。しかし、なにもしなかった。菅内閣も、いまの岸田内閣もなにもしていない。国会では、いまだにクオータ制の勉強会をやっている。
(つづく)

この続きは10月25日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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