連載878 先進国から転落中の日本の「辺境、あるある」
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(この記事の初出は9月20日)
わざと英語を話させない教育をしている
オンライン授業、ICT教育は、ある意味、システムの問題だが、日本が遅れているのはシステムだけではない。教育そのものの中身が、完全に「辺境化」している。いまの時代にまったくマッチしていない。
とくに、コンピュータのプロミラリング教育と英語教育は、無残としか言いようがない。
日本人は、小学校高学年・中学・高校と8年間以上も英語を学ぶのに、英語力はアジア諸国のなかでほぼ最下位というのは、どういうことなのだろうか。TOEFLのスコアはOECD加盟37カ国中最下位、アジア28カ国中26位である。その結果、日本の世界競争力ランキングは先進国中で最下位に近く、日本人の給料が世界に比べて低い原因にもなっている。
どう見ても、日本の英語教育というのは、英語を話させないための教育である。
英語は、アメリカや英国の言葉ではない。世界の公用語、標準語である。ところが、日本人にはこの意識がないから、いまだに、英語が話せない英語教師に授業をやらせ、子供たちを「英語嫌い」にしてしまっている。
2020年4月から、小学校3年生から英語教育が「必修化」されたが、コロナ禍によって大きく後退してしまった。
情けないのは、日本の政治家のほとんどが英語を話せないことである。首相も外務大臣も英語を話せない。また、学歴キャリアが国内だけという国は、世界でも珍しい。むしろ、途上国、後進国の指導層のほうが英語を話すうえ、高学歴である。
英語、学歴はいいとしても、いまの日本の政治家たちの最大の問題は、日本の教育がもはや世界から大きく遅れている、日本の教育では今後の社会を生きられないという認識がないことだ。
いくらでも挙げられる「辺境、あるある」
ここまで、日本の辺境ぶり、ガラパゴスぶりを、思いのまま述べてきたが、これ以上いくらでも挙げられるので、以下、ランダムに箇条書きにしてまとめておきたい。
[若者の自殺が多い]
[ほとんどの若者が海外留学しない]
[いまだにキャッシュしか受け取らない店がある]
[時給が安すぎる]
[トイレがハイテク過ぎる]
[街に電線がやたらと多い]
[六畳一間などの狭いアパートがある]
[いたるところに自動販売機がある]
[地方都市にシャッター通りが目立つ]
[メイド、バトラーなどの富裕層向けのサービスがない]
[リボ払いが簡単にできる]
[病院は3時間待ち3分診察]
[寝たきり老人が多い]
[電車の駅で切符を売っている]
[ハンコがないと契約できない]
[歯並びが悪い人が多い。歯列矯正する人が少ない]
[役所ではまだファックスを使っている]
[裁判で「メール」「デジタルデータ」が物証として認め
られない]
[国会にタブレットを持ち込めない]
[電線がむき出しで、街に電柱がやたら多い]
まだまだあるが、このくらいにしておこう。
海外観光地に日本人がいないという衝撃
それにしても、コロナ禍が終息しつつあるなかで思うのは、今後も鎖国は続く、ガラパゴス化は解消せず、日本はますます辺境化するということだ。
コロナ禍になる前から、こうなるのは目に見えていた。それは、インバウンドという名の海外からの旅行客が増えるのと並行して、海外に出て行く日本人が減ったからである。
かつて、日本経済の黄金期には、世界どこに行っても日本人がいた。世界の主だった観光地には、必ず日本人がいて、日本語のガイドブック、リーフレットが置かれていた。
ところが、最近は日本人観光客の姿がない。本当に減った。
これは、明らかに日本の国力の衰退を意味している。いまや円安、物価高もあり、一般の労働者が給料から貯金するぐらいでは、海外旅行に行けない時代になった。
ところが、テレビ番組の製作者には、こうした認識はなく、たとえばいまだに『世界の村で発見! こんなところに日本人』という番組をやっている。
この番組はヤラセが過ぎていて、飛行機ですぐ行けるようなところにわざわざ長距離バスを乗り継いで行かせ、「こんな僻地に」という「辺境感」を演出している。
しかし、番組に登場する「辺境」より、日本のほうが「辺境」かもしれないのだ。
(つづく)
この続きは10月27日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。