連載886 不動産バブル崩壊、食糧危機、習近平続投—- 中国が抱える「3大リスク」とは?(下)

連載886 不動産バブル崩壊、食糧危機、習近平続投—-
中国が抱える「3大リスク」とは?(下)

(この記事の初出は10月4日)

 

「3000年に1度」という大洪水と大旱魃

 不動産バブルの崩壊と並んで深刻化しているのが、食糧危機だ。これは、ここ2、3年の気候変動による洪水、旱魃などが農作物に大きな被害をもたらしたことに起因している。
 とくに、今年の大洪水と旱魃は、3000年に1度とまで形容されるひどいものになった。
 今年の6月、福建省、広東省、広西チワン族自治区などの中国南部は、記録的な豪雨に見舞われ、各地で洪水や土砂崩れが相次ぎ、500万人以上が被災した。
 この豪雨が収まったと思ったら、今度は長江とその周辺の水流が干上がるほどの大旱魃がやってきた。雨がまったく降らなくなったのだ。
 本来、長江流域は水が豊かな地域で、中国の農業生産の3分の1を支えてきた。ところが、干上がった川から600年前の仏像が現れるというニュースが報道されるような大旱魃に見舞われた。この大旱魃は、本来は雨の多い9月に入っても、安徽省、湖北省、湖南省、江西省などで続いてきた。
 この事態に、中国政府はなんと北京五輪で世界を驚かせた「人工降雨」対策を行った。四川省では、ロケットやドローンで雲の中にヨウ化銀を散布し、人工的に雨を降らせたが、これは環境破壊につながる禁じ手だ。



「食糧買い占め」批判を否定する中国政府

 日本では、ウクライナ戦争による食糧危機が報道され、ウクライナやロシアの小麦にばかり注目が行っている。しかし、小麦の世界一の生産国は中国で、中国では小麦を自給自足している。
 ところが、その中国が今年はなんとアメリカ産小麦を大量に買っているのだ。これは、今後の食糧危機を見据えてのことなのだろうか?
 これまで、何度も中国による「食糧買い占め」は批判されてきた。それが、大量の小麦買いでさらに強まった。しかし、中国政府はこうした批判をいっさい認めていない。
 その辺の事情を遠藤誉・筑波大学名誉教授が、「Yahoo!ニュース」に、『世界食糧危機の中、なぜ中国には潤沢な食糧があるのか?』という寄稿で、ていねい解説していて、非常に参考になる。
 この寄稿によると、5月27日、中国外交部は定例記者会見で記者から出た「最近、中国は国際市場からあまりに多くの食糧を買い占めているという批判が西側諸国から出ているが、中国はそれをどう思っているか?」という質問に対して完全否定している。「2021年までに、中国の穀物生産量は7年連続で0.65兆キログラム以上で、世界最大の穀物生産国であり、世界第3位の穀物輸出国となっている。中国は自給自足に関して自信があり、国際市場に入り込んで『食糧を買い占める』という必要はない」(汪文斌報道官)


(つづく)

この続きは11月8日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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