連載888 どうなる円安、物価高、賃金安? 「失策」「愚策」続きの岸田内閣と日本経済の行方(上)

連載888 どうなる円安、物価高、賃金安?
「失策」「愚策」続きの岸田内閣と日本経済の行方(上)

(この記事の初出は10月18日)

 とうとう支持率が30%を割り、“危険水域”に入った岸田内閣。山積する問題に対し、「失策」というか「愚策」連発で、このままでは日本はとことん落ちぶれてしまうだろう。
 もはや“昨日とまったく違う明日”を早急に用意・実行しないと、どうにもならないときにきている。明るい話をまったく聞かなくなったいま、なにか提言することさえバカらしくなった。
 最近、円が200円になったときどうなるか?と想像してみたが、それはけっこう恐ろしい状況だ。

 

どんどん深刻化するスタグフレーション

 10月11日から、全国旅行支援と外国人観光客の規制緩和が始まり、テレビは、賑わう観光地の模様を中継している。レポーターたちは、あい変わらず外国人観光客に日本の魅力を聞き、“爆買い”をレポート。その一方で、割引価格で旅に出た日本人観光客には、なにがおトクか聞いている。
 しかし、コロナ禍が収束ムードにあるとはいえ、日本人はいまだにマスクを着用し、報われない働き方を続けている。観光地の楽観ムードは、いまの日本のリアルではない。
 実際、物価が上がり続けているのに、賃金は実質的に低下している。スタグフレーション(インフレ下の不景気)が進んでいる。
 ウクライナ戦争がどうなったか? アメリカの中間選挙の行方は? 北朝鮮はまだミサイルを撃つのか? 習近平は実質「皇帝」となり台湾進攻を行うのか? 統一教会をなんとかしてほしい? などと言っている場合ではないのだ。
 厚労省の「毎月勤労統計調査」によると、8月の実質賃金(消費者物価の変化率を控除した賃金)は、前年同月比で1.7%減少している。今年の年初来、名目賃金(現金給与総額)はゆるやかに上昇しているものの、その上昇率を上回るペースで消費者物価が上昇している。 
 これがスタグフレーションで、この状況は年末年始にかけてさらに深刻化する。


内閣支持率、“危険水域”の30%割れに

 一般国民にとって、生活が日毎に苦しくなるのだから、内閣支持率が上がるわけがない。そればかりか、岸田内閣の場合、安倍元首相の国葬問題、統一教会問題で失策を繰り返し、支持率を急速に落とした。
 時事通信が10月10~13日に行なった「10月の世論調査」では、なんと30%を割り込み、27.4%と“危険水域”に突入した。参院選後の「7月の世論調査」ではまだ49.9%あり、「黄金の3年間」が続くと言われたのが嘘のようだ。
 これまでの時事通信の世論調査を振り返ると、内閣支持率が大幅に低下した記録は何度かある。ひどいのは、1989年5月の竹下登内閣の4.4%。このときは、リクルート事件の処理、消費税の導入に対して国民の不満が爆発した。
 2001年3月の森喜朗内閣の9.6%もひどかった。ハワイ沖で実習船『えひめ丸』が沈没事故を起こしたときもゴルフを続けていたことで、世論から完璧に見放された。
 このように10%を切れば、即退陣となるが、岸田内閣の場合、まだ30%を割ったばかりなので、なんとも言えない。挽回がありえるからだ。しかし、現状を見る限りはとうてい無理だろう。 
 ただ、岸田首相が辞任したとしても、それで日本の悲惨な現状が変わるわけではない。

(つづく)

この続きは11月10日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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