連載902 岸田政権は「脱炭素」に無理解・無策。 なぜ日本は“環境後進国”に転落したのか? (壱ノ上)

連載902 岸田政権は「脱炭素」に無理解・無策。
なぜ日本は“環境後進国”に転落したのか? (壱ノ上)

(この記事の初出は11月8日)

 またも日本の先行きに対して絶望的なことを書かなければならない。今回は、気候変動対策、つまり「脱炭素」(カーボンニュートラル)に向けた取り組みだ。現在、エジプトで「COP27」(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)が開かれているが、かつて“環境先進国”と言われた日本は、見る影もない。岸田政権が無理解・無策で、まったくやる気がないと言っていいからだ。しかも、日本は、世界の国々のなかでもっとも「地球温暖化陰謀論」がはびこっている。
 しかし、気候変動対策に乗り遅れると、経済衰退にさらに拍車がかかってしまう。
 いったいなぜ、日本は“環境後進国”に転落したのか?今日、明日の2回に分けて検証記事を配信する。

 

今回も成果は期待薄か?「COP27」始まる

 11月6日から、エジプトのシャルム・エル・シェイクで「COP27」(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)が始まった。会議は18日まで続き、気候変動対策、つまり「脱炭素」(カーボンニュートラル)に向けての今後の世界の取り組みが討議され、ある程度の枠組みが決まる。
 前回の英国グラスゴーでの「COP26」も紛糾したが、今回もまた紛糾は必至で、取り組みが進展しないことが危惧されている。
 そのため、準備会合で国連のグテレス事務総長は、「ウクライナ戦争で気候変動対策は停滞している。化石燃料分野では後退さえ見られる」と、危機感をあらわにした。
 また、マット・マクグラス環境編集委員は、すでに合意されている世界の気温上昇を1.5度以下に抑える「確実な道筋は見えていない」とする国連の報告書を発表した。この報告書では、「COP26」以降、各国政府が示した炭素削減計画は「ひどく不十分」と指摘している。
 そんななか、注目されるのは、トランプ前大統領と違って気候変動対策に積極的なバイデン大統領が参加することだ。バイデン大統領は11日に演説し、アメリカの気候変動に対する取り組みを表明することになっている。
 しかし、その内容が画期的かといえば、そうとは言えないという。

 

過去最大のバイデンの気候変動対策

 ここまで、世界の気候変動対策を牽引してきたのは、ドイツや北欧諸国を中心とした欧州である。アメリカもオバマ政権時は積極的だったが、トランプ前大統領が登場して一気に後退した。なんと、トランプは「パリ協定」から離脱し、地球温暖化を「単なる天気だ」と言い放った。
 バイデン大統領は、これを再度引き戻し、「パリ協定」に復帰するとともに、就任するやいなや2030年までに温室効果ガスの排出量を少なくとも50%削減すると宣言した。
 そして、昨年の「COP26」では、途上国の気候変動対策を援助するために2024年まで毎年114億ドルを投じることを表明した。ところが連邦議会はその支出を求めず、大統領がこれまで獲得した予算はわずか10億ドルに過ぎない。これは、トランプ前政権より少ない。もちろん、ウクライナへの軍事支援額よりはるかに少ない。
 とはいえ、バイデン大統領の国内向けの気候変動対策は、これまでのどの政権よりも大規模かつ鮮明だ。その手始めとして、7月に、異常気象や自然災害に耐えられるインフラの整備に23億ドル(約3400億円)を投じると発表。その後、8月に署名した「2022年インフレ抑制法案」(IRA)では、アメリカ政府としては過去最大の3750億ドル(56兆2500億円)を気候変動対策に投じるとした。
 この発表は、アメリカの半数の州が熱波到来で異常高温が記録されているなかで行われたので、まさにドンピシャのタイミングだった。
 しかし、期待された大統領により大きな権限が付与される「気候緊急事態宣言」は見送られた。多くの民主党議員や環境保護団体から宣言を発令するよう強く求められていたが、党内の一部議員や共和党はインフレ対策を最優先することを主張したからだ。

(つづく)

この続きは12月2日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

タグ :