連載933 日本は再びアメリカの「防波堤」に! 反撃能力確保、防衛費増強はなぜ決まったのか? (完)

連載933 日本は再びアメリカの「防波堤」に! 反撃能力確保、防衛費増強はなぜ決まったのか? (完)

(この記事の初出は2022年12月20日)

 

「日米同盟」で本当に日本を守れるのか?

 さて、ここまで述べてきたように、今回の防衛費増強による反撃能力保持も、結局は、アメリカとの同盟の延長線上にある。もっとはっきりいえば、アメリカに守ってもらうために、アメリカ軍の変撃力を補完する力を持つということだ。 
 そこで、問いたい。日米同盟の基礎である「日米安全保障条約」は、万全なのか? 
 その答えは「ノー」である。
 安保第5条には、「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」とある。となると、アメリカの連邦議会が日本がどんなに窮地に陥ろうとアメリカ軍の参戦を認めなければ、日本は守られないのである。
 たとえば、中国が尖閣諸島を武力で獲りにくる、北朝鮮のミサイルが日本領土内に着弾するようなことが起こっても、アメリカの自動参戦とはなりえない可能性がある。
 この危惧があるから、日本政府はアメリカで大統領が代わるたびに、この5条が尖閣諸島にも適用されることの確認を求めてきた。アメリカはその度に、「適用される」と言ってきた。しかし、それは単に口先だけの話だ。
 ウクライナ戦争を見ればわかるが、日本有事の際、おそらくアメリカは武器は供与してくれる。しかし、それだけかもしれない。よって、敵ミサイルは自分で撃ち落とす、敵軍は自軍のみで撃破するほかないのである。
 要するに、日本がいくら要請しても、連邦議会(つまりアメリカ国民)が承認しなければ、日米安保5条は履行されない。NATOは軍事同盟のため、条約締結国の1国でも攻撃されれば全締結国が参戦する。しかし、日米安保はそうなっていない。
 また、アメリカの武器をいくら揃えてみても、それを使用するとなるとアメリカの使用許可がいる。さらに、電子兵器にいたっては、アメリカはソースコードを開示してくれない。

注目される1月の岸田訪米、首脳会談

 このように見てくると、日本の安全保障というのは抜け穴だらけである。それを埋めないで、ただ防衛費を増額する、アメリカ軍の補完として反撃能力を保持するというのが、じつに間抜けな政策であるのがわかるだろう。
 これを、第二次大戦で敗戦し、占領されたのだから仕方ないとしてしまえば、その先にはなにもない。私たちは、ただ漫然とこの国で暮らすだけで、すべては運まかせとなる。
 岸田首相は、1月上旬に訪米し、バイデン大統領と会談する予定だという。その際、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれるという。
 この会談で、いったいなにが決まるのだろうか?
 いつも通り、もう聞き飽きた「日米同盟をよりいっそう強化することで一致した」では、なにも進展しないのと同じだ。
 中国の軍拡も、北朝鮮の軍拡も着々と進んでいる。それに対して、独自の抑止力を持たないままで、日本は本当に大丈夫なのだろうか?

*今回のメルマガとほぼ同じ内容の記事を、「Yahoo!ニュース」個人欄に投稿しました。


(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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