連載934 次の投資先はインドとの声強まる。
中国を抜いて「世界の工場」に!は本当か? (上)
(この記事の初出は1月3日)
昨年来、世界の投資家の目がインドに向けられるようになった。コロナ禍からの回復過程で、経済成長が目覚ましいからだ。ウオール街では、いまやインド株投資がトレンドになっている。
かねてから「次の世界の工場はインドだ」という声があったが、それが現実化するのは予想より早くなったと言われている。はたして、インドの経済成長はホンモノなの
か? インド経済の強みとはなにか?
2023年の年頭にあたって、次の“投資フロンティア”インドについて考察してみたい。
じつはしたたかで商売大好きなインド人
どちらかと言うと、日本人はあまりインド人が好きではないと、私は思っている。
最近の例で言うと、ウクライナ戦争で西側諸国がロシアへの経済制裁を強めるなか、インドは逆にロシアとの貿易、経済関係を強めて、安く仕入れたロシア原油を精製して転売したりしている。こういった立ち回りを、日本人はとくに嫌うからだ。また、かつては英国領だったのに、なぜ「親ロ」なのかと、苦々しく思っている人も多いと思う。
そこで、本題に入る前に、ちょっとだけ触れておくと、じつはインドは1947年に独立後、社会・経済モデルをソ連に求めて国家を運営してきたという歴史がある。つまり、れっきとした「親ロ国家」なのである。なにしろ、インド軍の兵器は、半分以上がロシア製だ。
それなのに、冷戦時代は、東西のどちらの陣営にも属さない「第3世界」(非同盟・中立)の盟主を標榜していたのが、インドである。
つまり、インド人というのは、したたかな人々であり、私の見方では、中国人と同じように、カネにこだわる人々である。東南アジアに行けば、ほとんどの国で派手に商売をしているのは、中国人とインド人だ。
インドは世界最大の移民送り出し国
世界のどの大都市に行っても、中国人とともに必ず出会うのがインド人である。東南アジアはとくにそうで、バンコクにもシンガポールにもクアランプールにもインド人街(リトルインディア)があり、街には独特のカレーの匂いが漂う。
近年は、東京の西葛西がインド人街になった。
インド人に出会うのは、インド人街ばかりではない。ビジネスシーンにおいてインド人に出会わないことはほとんどない。大企業から中小企業まで、多くの会社で、インド人社員が活躍している。なにしろ、インド人は英語(といってもインド訛りの「ヒングリッシュ」)を話すうえ、ITにはめっぽう強い。
意外に知られていないが、いまやインドは世界最大の移民送り出し国となり、国連の統計(2020年)では約1787万人と第2位のメキシコの約1119万人を大きく上回っている。英語とITができるのだから、インド人は世界のどこに行っても仕事がある。
インド外務省によると、移民2世・3世を含むインド系住民(ディアスポラ)は世界に3210万人いるという。これは、約6000万人とされる在外中国人(いわゆる華僑)に次いで多い。
ちなみに、インド人の在住人口が世界一多いのがアメリカで、その数なんと466万人。東南アジアでは、マレーシアがいちばん多く298万人となっている
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。