連載939 ゼロコロナ失敗で中国経済大減速! どうなる?「米中対立」と「中国デカップリング」 (中)

連載939 ゼロコロナ失敗で中国経済大減速! どうなる?「米中対立」と「中国デカップリング」 (中)

 

中国経済が抱えている3つの問題点

 2020年に始まったコロナ禍がなくとも、中国経済は低迷せざるをえない状況にあった。なぜなら、中国経済が抱えてきた問題が、年々拡大してきたからである。
 現在、中国が抱える問題点を大別すると、3つに絞られるだろう。
 1つめは、人口ボーナス期が終わりつつあり、人口減による高齢社会が進んでいること。生産労働人口が減っていており、このままいくとじきに人口オーナス期に入るので、これ以上の成長は、よほど大きなイノベーションが起こらない限り望めない。
 2つめは、深刻化する米中対立だ。習近平政権になってから、アメリカは明らかに中国を覇権挑戦国と捉えるようになり、「新冷戦」とも呼べる状況に、米中関係は変化した。この結果、中国に投資されていた世界の資本は引き上げられるようになった。
 3つめは、2の影響もあって、世界の「「脱中国」(デカップリング)が進んでいることだ。もし、中国がこれまで築いて来たサプライチェーンが分断されれば、中国の衰退は避けられない。
 そこで、ここからは、2と3に焦点を当てて、今後の中国経済を考えてみたい。

ますます対中強硬策を強めるアメリカ

 トランプ前政権もそうだったが、バイデン政権もまた、中国のこれ以上の拡大を阻止しようとしている。
 12月16日、国務省内に「チャイナ・ハウス」(俗称)という新部署が発足し、対中政策の立案と実行を主導することになった。 国務省のパテル副報道官は記者会見で「中国との戦略的競争の規模や範囲、利害関係は、われわれに新たな方法で考え、協力し、行動することを促している」と述べた。
 また、連邦議会では、主に中国をターゲットとした「国防権限法」(NDAA)の改正が行われ、アメリカはEUや日本などの同盟関係にある地域や国と協力し、経済的な中国包囲網を強化することになった。これにより、来年は省庁を横断する「対中戦略」の専門組織がつくられる。
 この組織が目指すのは、たとえば中国が特定の国に制裁関税を科した場合、アメリカ主導で各国とともに中国に報復措置を打ち出すことだ。つまり、中国経済の封じ込めである。

激化する先端半導体をめぐる米中戦争

 現在、中国封じ込めの最前線は、「先端半導体」の製造とその技術である。半導体は年々、微細化が進み、今後は3ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下の先端半導体の製造が主戦場になると見られている。
 いまのところ、これを製造できるとされているのは台湾TSMCと韓国サムスン電子だけであり、また、半導体製造装置においては日本がリードしている。
 アメリカとしては、こうした先端半導体の製造・技術を中国に渡さないことが至上命題でとなっている。そのため、TSMCをアリゾナに誘致し、工場建設を進めてきた。
 そんななかバイデン政権が、この10月に打ち出したのが、先端半導体の製造装置や技術を中国に提供することを制限する措置であり、さらにアメリカ人が中国の半導体関連企業で働くことも禁止した。

米日蘭の「半導体3国同盟」のダメージ

 このようなアメリカの半導体輸出規制は、まだローエンドの半導体しか製造できない中国には決定的なダメージである。中国に不足しているのは、半導体製造の技術とそれを支える人材だからだ。
 さらにアメリカは、今月12日、半導体製造装置の分野の規制をさらに強化するとして、日本とオランダに協力を要請した。この要請に両国とも応じた(というか応じざるをえなかった)結果、米日蘭の「半導体3国同盟」が形成された。
 世界の半導体整備5大企業とされるのは、米アプライドマテリアルズ、ラムリサーチ、KLA、日本の東京エレクトロン、オランダのASMLである。この5社が提供する装置がないと、ハイエンドの半導体はつくれない。
 米中半導体戦争が勃発してから、中国は半導体を自前生産することに注力してきた。「半導体崛起」を掲げ、北京郊外などに大工場の建設を進めしてきた。中国のメディアは、「アメリカが規制を強化すればするほど、中国の研究開発はさらに加速する」と言っているが、専門家に言わせると、「それは無理な相談」とのこと。
 先端半導体がなければ、今後、中国のハイテク製品はハイテク製品ではなくなる。


(つづく)

この続きは2月8日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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