連載946 これは「終わりの始まり」なのか? 国債金利の上昇、暴落で日本経済は破綻する! (上)
今回は最悪の近未来図になるので、あっさりと述べていきたい。もはや、先送りに先送りを重ねてきた「財政破綻」が目前に迫っているのではという話だ。
先週末、日銀は市場の金利引き上げ圧力に抵抗し、なんと10兆円近く国債を購入した。週明けの1月16日も国債購入を続けた。そして、今日(17日)からは、金融政策決定会合が開かれ、18日に次の金融政策が決まる。
長期金利を抑えてきたYCC(イールドカーブ・コントロール)政策を続けるか? 止めるのか?
どちらを取っても、日本経済はこの先、最悪の局面を迎えそうだ。
“金融緩和ボケ”で大きく報道されない大問題
今年のNHK大河ドラマは『どうする家康』だが、いま直近で日本の最大の問題は「どうする日銀」だ。
市場関係者(この場合、金融関係者、企業家、投資家、官僚、政治家はもとより、すべての国民が関係者と言える)は、17日、18日に開かれる日銀の金融政策決定会合の決定次第で、未来が決まる。
それなのに、先週、10年ものの長期国債の金利が日銀の指値オペの上限0.5%を超えたことは、大ニュースにはならなかった。いつもと同じ、経済ニュースの1本として報道されただけだ。
だから、18日の午後、政策決定後の記者会見も、大して大きく報道されないかもしれない。しかし、だからといって、なにも起きないわけではない。
もはや、日本のメディアも国民も、完全に“金融緩和ボケ”してしまったとか言いようがない。それ以上にどうしようもないのは、政治家たちだ。今日まで国債を際限なく発行させて、そのカネをバラまいて政治を行ってきたからだ。
金利抑制策は本来やるべきでない非常時政策
今回の日銀の金融政策決定会合の最大のテーマは、これまで続けてきたYCC(イールドカーブ・コントロール)政策をどうするかだ。これは、二者択一で、続けるか?止めるか?のどちらかである。
ただし、どちらを取っても、日銀は追い詰められ、黒田東彦総裁は、“討ち死”を免れない。
YCCは、本来市場が決めるべき長期金利を、日銀が決め、国債を市場から大量に買うことで金利を押さえ込んでしまうという政策である。資本主義自由経済においては、金利は市場において自律的に決まるものだから、禁じ手である。
しかし、国家の非常時には、行われる。
アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は、1942年から1951年までの9年間、YCC政策を実行した。これは、連邦政府が第2次大戦の費用を必要としたからで、戦費調達のための国債の金利を抑え込むためだった。
しかし、戦後に物価が上昇したため、市場に委ねることに戻さざるをえなくなった。そして、FRBの財務は大きく傷ついた。本来、中央銀行の役目は政府から独立した機関としての物価の安定だから、YCCはそうした目的と相容れないのだ。以来、FRBはYCCを行なっていない。
日銀バズーカ砲は物価上昇で空砲に
黒田日銀総裁は、こうしたことを知りながらも、安倍元首相を取り巻くリフレ派の圧力で、「仕方ない、やるならとことんやってやろうじゃないか」と、“異次元緩和”を行い、そのバズーカ砲の最後の一撃としてYCCまで採用したのである。
この日銀バズーカ砲の威力は大きく、デフレが続く限り、政府はいくらでも国債発行ができた。政治家たちは、選挙に勝つため、バラマキを続けられた。最近の「異次元の少子化対策」も、なんのことはない「出産補助金」「児童手当の拡充」などのバラマキだから、どんな政治家でもできる。
日銀は、昨年12月に金融政策決定会合で、指し値オペの上限を0.25%から0.5%に引き上げた。これは、事実上の利上げで、YCCは維持したものの、これにより、さらに金利を上げざるをえなくなるだろうと市場は読んだ。いずれ、日銀バズーカ砲は空砲化するというのだ。
なにしろ、世界中がインフレで、それも前年同月比で10%に達している国もある。日本も消費者物価指数(CPI)は上昇を続け、東京都の生鮮食品除くコアCPIの前年比上昇率は12月に4.0%に達した。
それでも、意地でもYCCを続けるか? あるいは「もうやめた」と止めてしまうのか? 黒田総裁次第だ。経済メディア、専門家の見方を見ると、半々のよう。ただ、どちらかというと「0.5%堅持」のほうが多い。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。