映画「犬神家」舞台、歴史に幕

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共同通信
1976年の映画「犬神家の一族」でロケ地となった「井出野屋旅館」=16日、長野県佐久市

 名探偵金田一耕助が活躍する1976年公開の映画「犬神家の一族」(市川崑監督)でロケ地となった長野県佐久市の老舗旅館が、5月いっぱいで営業を終えることを決めた。旅館を経営する夫妻が高齢になったことが理由で、建物も売却する方針。ファンからは惜しむ声が寄せられ、撮影が行われた部屋の宿泊予約も増えている。

 売却を決めたのは旧中山道望月宿にある「井出野屋旅館」。木造3階建てで、築約100年という。劇中では「那須ホテル」として登場した。経営する4代目の井出忠昭さん(81)と妻勝子さん(78)によると、当初は料亭だったが戦後になり中山道の観光客が増え、旅館営業に切り替えた。

 犬神家の一族は作家横溝正史が原作のミステリー。76年の公開映画では俳優の石坂浩二さんが金田一耕助を演じた。玄関を入りすぐに階段が目に飛び込んでくる構造などを市川監督が気に入り、撮影協力の依頼があったという。

 撮影では、見物にきた学生らで人だかりができたほど。忠昭さんは「撮影中に電話が鳴らないよう受話器を上げていた」と懐かしむ。

1976年の映画「犬神家の一族」の撮影が行われた「井出野屋旅館」の部屋=16日、長野県佐久市