連載949 金融バブルの崩壊は近いのか? 「リスク資産」を捨て「実物資産」に切り替えるとき (上)

連載949 金融バブルの崩壊は近いのか?
「リスク資産」を捨て「実物資産」に切り替えるとき (上)

 2023年が始まってもうすぐ1カ月になろうとしている。
 すでに、今年の景気予測は出揃っているが、最近の状況を見ていると、景気がよくなることはないと言える。アメリカはもとより、EUも中国も経済は低迷し続けるだろう。そればかりか、金融バブルが弾けて、株などのリスク資産の暴落もありえるかもしれない。
 実需よりも人間の欲望を増幅することで成り立ってきた「現代資本主義」(=欲望資本主義)は、その限界にきているのかもしれない。

 

アメリカ2023年度の成長率は1%前後

 今日までの各種経済レポート、経済報道を見てくると、今年は「景気後退」(リセッション)の年になるという見方が圧倒的である。エコノミストたちのほとんどが、インフレと金利上昇が続いていく限り、消費は減退し、経済成長率は落ち込み、今年の半ばを待たずに景気は後退局面を迎えるとしている。
 とくに、アメリカはFRBが利上げを継続しているので、すぐにでもリセッション入りするだろう。早くて春にも、景気後退が目に見えるようになると言われている。
 FRBはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.75%~5.00%に設定しており、それを達成しても、そのまま年内は据え置くとされている。
 そのため、どこもかしこもアメリカの2023年度の経済成長率を1%前後と予測している。IMFの2022年度のアメリカの経済成長率(昨年10月発表の予測値)は1.64%。今年は、これを下回るのは確実と見られている。

中国、欧州、日本も景気後退で成長見込めず

 では、IMFが2022年度の成長率を3.21%とした、世界第2位の経済大国・中国はどうか? 中国社会科学院は昨年12月13日に「経済青書」を発表し、そのなかで2023年の中国の実質GDP成長率が5.1%前後になるとの見通しを公表した。
 しかし、ゼロコロナからウィズコロナ転換に失敗した混乱が長引けは、5%の成長はありえないだろう。しかも、中国はすでに人口減に転じているので、消費は減退していく。昨年並みの3.0%前後がいいところではないだろうか。
 ユーロ圏も、惨憺たる状況だ。IMFによるユーロ圏19カ国の2022年の経済成長率は3.2%。欧州員会による今年の見通しは2.3%となっているが、ウクライナ戦争が長引いているので、2.0%はどう見ても無理だろう。
 最後にわが日本だが、IMFによる2022年度の経済成長率は1.75%。これは、先進諸国の中でも最低のほうで、今年はこれをさらに更新するのは確実だ。政府が発表している2023年度の成長率予測は1.5%だが、あくまでも希望的予測と言うほかない。

巨大IT企業は相次いでリストラに踏み切る

 リセッションがインフレ下で進行した場合、物価上昇に賃金上昇が伴わなければ、それはスタグフレーションであり、生活はどんどん苦しくなる。生活困窮者と失業者が街に溢れることになる。
 リセッションが予測できるようになったとき、企業はどうするか? 
 当然ながら、コスト削減に走る。そのもっとも簡単な方法は、「リストラ」(和製英語で「人員削減」のこと)だ。昨年後半から、アメリカの巨大IT企業は、相次いで大量解雇(レイオフ)に入った。
 メタ(フェイスブック、インスタグラム)、アマゾン、ツイッター、グーグルなど、「ビッグ・テック」と呼ばれる巨大IT企業は、コロナ禍の「巣篭もり需要」で一時ウケに入っていたが、いまやそのメッキは剥げ落ち、コスト削減に追い込まれている。
 IT企業の雇用情報サイト「Layoffs.fyi」によると、2022年のレイオフ者数は約15万人を超え、2021年の約2万人の7倍に達した。このレイオフの波は今後も続く。
 ビッグ・テックの従業員数は巨大だから、レイオフ者数も巨大だ。メタは1万1000人以上、アマゾンとグーグルはそれぞれ1万人の人員削減を発表した。グーグルは今年になって1万2000人と追加発表した。
 ツイッターは、昨年10月にイーロン・マスクが買収したが、その直後、社員の半数に当たる約3700人を解雇した。そして、先日の報道では、「社員数の80%を削減」するとされ、マスクはこれを否定している。
(つづく)

この続きは2月23日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

タグ :