3.11、サイレンに心の痛みも

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共同通信

 東日本大震災が発生した3月11日の午後2時46分に鳴り響くサイレンの音を変えられないか―。記憶がよみがえり当時に引き戻されるようで、耳をふさぎ、心の痛みに耐えてきた遺族がいる。心情に配慮し流さない自治体もあるが、被災3県の沿岸市町村の8割超は黙とうの合図などのため今年も続ける方針。鎮魂のあり方について当事者が声を上げ始めた。

 「サイレンは死へのカウントダウンのよう」。宮城県石巻市の鈴木由美子さん(53)は小学6年だった三男秀和君=当時(12)=を亡くした。震災発生時刻は授業中だった。津波を知らせるサイレンは怖かっただろう、それでも生き延びようと必死だったはず。その場面に自分が入り込む感覚になるのが苦しく、3月11日は寺にこもって念仏を唱えるようになった。

 市は屋外の拡声器から震災時と同じサイレンを鳴らす。鈴木さんは「亡くなった人たちはあの音を聞いて穏やかな気持ちでいられるのかな」という疑問がぬぐえない。

 市は「身を引き締めようと思える」との住民の声もあり、現状では変更は難しいとする。