津山恵子のニューヨーク・リポート Vol.3

津山恵子のニューヨーク・リポート
Vol.3 NGOの支援活動に大きな変化 ロシアのウクライナ侵攻で

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 ロシアがウクライナに侵攻して1年が経った。この間、アメリカを始め西側諸国が金銭や軍事面での支援を発表してきた。アメリカのメディアは、市民や兵士らのルポも途切れなく伝えている。しかし、私たちが少しでも支援しようと寄付を送っている非政府組織(NGO)の活動内容はあまり伝わってこない。それは、NGOのメンバーらがウクライナに入国できないでいるためだ。

 NGOの活動というと、現場に駆けつけ、危険を顧みず、負傷者や被害者に手を差しのめる、という映像が思い浮かぶ。まさに現在、トルコ・シリア大地震の現場には、世界中のNGOメンバーや犬らが入り、崩れやすい瓦礫のはざまで活動している。が、ウクライナでは、それが叶わないでいる。

 日本外務省は、ウクライナ全土に対し、危険レベル4(4レベルの最高)の避難勧告を出し、日本国民の渡航を禁止している。地震災害の現場と異なり、戦争の場合、いつどこで何が起きるのかリスクが読めないためだ。

 日本人でウクライナ入りしているのは、報道機関やフリーのジャーナリストやカメラマンらのみ。NGOのメンバーらは、隣国のモルドバ、スロべキア、ポーランドに滞在し、ウクライナ国内のNGOと連携を取り、支援活動を続けている。

 遠隔による支援の困難さを聞くチャンスがあった。日本のNGOジャパン・プラットフォームが開催したウェビナー「ウクライナ危機〜侵攻から1年 支援のいまとこれから」(2月21日)で筆者の私がモデレーターを務めた。例えば、オペレーション・ブレッシング・ジャパン(OBJ)は、高齢の寡婦、寡夫、低所得の年金生活者など最も弱い立場にある78世帯に、固体燃料ストーブ2台と2トンの練炭を運び続けている。ドナルド・トムソン代表は、「現地NGOとの連携も、停電や通信障害で途切れがち。現状を把握するために、写真やビデオを送ってもらうのさえ困難」と話した。

 

ニューヨークでは、ウクライナ移民も多い。
国旗の色がどこでも見られる(筆者撮影)

 ロシア侵攻以来、連絡を取り合っているキーウ在住のボグダン・パルフォメンコさんが日々発するSNSの情報も生々しい。大阪育ちで日本語が堪能なボグダンさんが、YouTube配信中に体に掛ける毛布を取りに行ったりする。彼は、日本の人が直接彼に郵送する懐中電灯やカイロ、子供の文房具、インスタントコーヒーなどを市民や兵士に届けている。毎日アップされるSNSのビデオに映るのは、瓦礫や半壊の建物ばかり。そして懐中電灯で嬉しそうに勉強する子供や、インスタントコーヒーに喜ぶ兵士らだ。これは、ボグダンさん一家がにわかに現地NGOとなって活動している例だ。

 紛争地や災害地での活動経験があるNGOも手足を縛られたようなウクライナでの困難な活動状況。しかし、私たちは、自由、独立と民主主義のためにロシアに立ち向かうウクライナを忘れてはならない。NGOやボグダンさんらを通しての支援を続ける意味はそこにある。

 

津山恵子 プロフィール
ジャーナリスト。ザッカーバーグ・フェイスブックCEOやマララさんに単独インタビューし、アエラなどに執筆。共編著に「現代アメリカ政治とメディア」。長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

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