連載956 なぜ倒産させないのか? 若者を食い物にして生き残る日本の大学 (下)

連載956 なぜ倒産させないのか?
若者を食い物にして生き残る日本の大学 (下)

 

奨学金は返済義務のある単なる借金

 いまや、受験生はこのような大学に「食い物」にされるために、受験勉強をして大学に進学していると言っても過言ではない。
 いっとき、国会で奨学金返済に苦しむ若者たちの苦境が問題になったが、いつの間にかたち消えになった。しかし、この奨学金というのは、もっとも悪どい大学側の生き残り術だ。なぜなら、奨学金とは名ばかりで、「学生ローン」などと呼ばれても、それはただの借金であって返済しなければならないからだ。
 奨学金は2種類あると、どんな受験生向けのガイドブックにも書いてある。1つは、給付型の奨学金。成績がいいなどの理由によってもらえる援助金(学費免除など)だ。もう1つは、貸与型の奨学金で、金利が付くものと付かないものがあるが、将来にわたって返済しなければならない。つまり、卒業して働いたら、その収入から返済するわけで、奨学金などと呼ぶのもおこがましいものだ。
 この学生ローンは、アメリカでも問題になっているが、日本の場合も深刻だ。なにしろ、返済できない人間が続出しているからだ。
 「返す見込みがないなら、借りるな」という意見もあるが、この学歴による採用が平然と行われている国で、「お金がないなら大学に行くな」というのは、酷ではないだろうか?
 日本は実力主義社会ではなく、肩書き社会、縁故社会なのである。

大学生活の費用はいったいどれくらいか?

 文科省などの資料を見ると、大学に進学した場合の費用は、現在の日本の一般家庭ではかなり厳しいと言わざるをえない。
 まずかかるのが、初年度納付金(入学金を含む)で、その費用は、国公立大学なら約80万円~100万円、私立大学(医・歯学部系除く)なら約110万円~160万円が平均的な金額となっている。その後は、毎年、授業料がかかる。
 私立大の場合、文系と理系では授業料が違うので、それを考慮して4年間の学費の平均値を出すと、次のようになる。

国公立大学:約240万円~260万円(4年間)
私立大学(文系):約390万円(4年間)
私立大学(理系):約540万円(4年間)
私立大学(医歯系):約2,300万円(6年間)

 もちろん、これだけでは済まない。親元から離れて暮らすとなると、住居費、通学費、生活費もかかってくる。
 そんななかで、親の資産、収入状況によるが、たとえば不足分を学生ローンで1年間100万円、4年間で400万円借金するとなると、その返済はかなりきつい。
 たとえば10年かけて返済するとして、単純に1年で40万円、つまり月約3万3400円近い金額を延々と返すことになる(無利息の場合)。

(つづく)

この続きは3月9日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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