連載965 最有力候補ディサンティスと次期大統領選 (1) ディサンティスとはいったい誰か? Who,s Who? (完)

連載965 最有力候補ディサンティスと次期大統領選 (1) ディサンティスとはいったい誰か? Who,s Who? (完)

 

候補乱立なら「トランプが有利」との声も

 トランプ失速のなかで、ディサンティス以外の共和党候補者の名前も取り沙汰されている。
 その筆頭は、すでに出馬を表明した元国連大使のニッキー・ヘイリーだ。サウスカロライナ州知事を2期務めた手腕は賞賛されており、共和党初の女性大統領候補となる可能性がある。ただし、彼女は穏健派としてトランプを非難する一方で、その政策はかなりトランプに近い。
 続くのは、トランプ政権時の副大統領マイク・ペンス。副大統領を務めた実績と、2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件後にトランプと袂を分かったことが、有利に働くと見られている。また、エヴェンジェリカル(福音派キリスト教徒)の圧倒的な支持基盤を持つため、カトリックのディサンティスとの宗教戦争の可能性が言われている。
 さらに、元米国務長官マイク・ポンぺオ、ヴァージニア州知事グレン・ヤングキン、連邦上院議員テッド・クルーズ、メリーランド州知事ラリー・ホーガン、サウスダコタ州知事クリスティ・ノームなどの名前が挙がっている。
 本来なら、ここに現職の副大統領カマラ・ハリスが入ってもいいが、彼女の場合、メディアでのアピール力に欠け、この2年間で人気がガタ落ちでとても出馬できる状況にない。
 政治アナリストや共和党のベテラン議員なかには、「このまま候補者が乱立すれば、熱狂的な固定支持層を持つトランプが有利で、ディサンティスは不利になる」と見る向きがある。
 かつて早い段階で有力視された新星が、その後、失速した例は多い。また、40代で大統領になったのは、ケネディ、クリントン、オバマの3人しかおらず、ずれも民主党リベラル。共和党からは難しいと予想する評論家もいる。

高齢者(ジイサマ)対決だけはやめてほしい

 そんななか、アメリカ国民が大統領選に対して、いまひとつ盛り上がらない、冷めていることがある。それは言うまでもなく、もし、「バイデンvs.トランプ」という前回と同じ構図になるなら、歴史上ありえない「高齢者対決」になることだ。
 現在80歳と高齢のバイデンは、大統領選が行なわれる年には82歳。現在、76歳のトランプは78歳になる。まさに“ジイサマ対決”で、「それだけは止めてほしい」という声が根強い。
 実際、1月に公表された「インベスターズ・ビジネス・デイリー世論調査」(I&IーTIPP Poll)では、バイデンの2期目を支持する人間は22%しかおらず、民主党支持者に限ってでも36%に過ぎなかった。
 いくら熱狂的なファンがいると言っても、トランプもまた同じで、共和党支持者の半分以下しか2期目を望んでいない。
 簡単な話、身内の党から引退を望まれている現職大統領と、民主主義を破壊しアメリカの分断を加速させた前大統領が再び対決することのどこに、アメリカの未来があるのだろうか。

“秘密兵器”は元キャスターの美人妻

 もし若き共和党大統領が誕生するなら、ファーストレディは、彼の妻、ジル・ケイシ―・ディサンティスになる。
 2022年12月8日、タンパで行われた夫の当選祝賀パーティーに3人の子供たちと壇上に姿を見せた彼女は、ハリウッドスター顔負けのイエローとゴールドのゴージャスなドレス姿とその美貌で、聴衆の視線を釘付けにした。
 「ニューヨーク・ポスト」は、彼女を“フロリダのワンダーウーマン”と形容し、ディサンティスの「政治的な運勢を向上させる際にイメージ戦略の采配を担う、半ば公然の“秘密兵器”だ」と、紹介した。
 ケイシー・ディサンティスの経歴は、華麗だ。1980年6月、ノースカロライナ州のチャールストン生まれの42歳で、チャールストン大学の卒業生。特技は馬術で、大学時代に3度も全米優勝を果たしている。
 大学卒業後は、地元の放送局「WJXT」でニュースアナウンサーや司会者を務め、その後、「Golf Channel」に転じて、ホスト兼プロデューサーとして活躍した。
 2人の馴れ初めは、ディサンティスが海軍軍人だった当時、ノースフロリダ大学のゴルフ練習場での出会い。このとき、ケイシーが他のお客が残していったゴルフボールが入ったカゴを見つめていると、ディサンティスが自分を見ていると勘違いして話しかけてきたという。
 2人は出会いから半年後に婚約し、2009年9月に結婚。披露宴は、ディズニーワールドにある「エプコット」で行った。
 ケイシーは、昨年乳がんを患って闘病生活を送ったが、いまは完治している。中間選挙用に公開したCMで、ジーンズ姿のカジュアルな服装で登場し、そのときのことを回想して、夫をアピールした。
「私が人生をかけて戦っているとき、子供たちを世話してくれた」「立ち上がれなくなったとき、そばで支え、私のために戦ってくれた」
 また、昨年9月に、大型ハリケーン「イアン」がフロリダを襲ったとき、夫から被災者救済基金の責任者に任命され、4500万ドルの救援金を集めている。
*今回はここで終了します。続きは来週、ディサンティスをめぐる大統領選挙の動向を、さらに深掘りしてお伝えします。

(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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