連載973 最有力候補ディサンティスと次期大統領選 (3) もう始まっている選挙レース、勝ち抜くのは誰か? (下)
共和党、トランプ以外の候補者たち
では、続いて共和党のほうを見ていきたい。
現段階ではトランプに次いで出馬を表明しているのは、ニッキー・ヘイリーだけである。しかし、トランプの強硬路線、ポピュリズムに愛想を尽かしている穏健派のなかには、出馬を検討している人間も多い。ただ、出馬宣言するとトランプに攻撃されるので慎重になっているという。
○ニッキー・ヘイリーNikki Haley(元国連大使、51歳)
サウスカロライナ州下院議員を経て、2010年にインド系女性として初めて同州知事選で当選した。2016年大統領選ではトランプを支持しなかったが、政策はトランプと同じだった。しかし、その後、トランプの横暴を非難するようになり、政策も穏健派に近づいた。共和党初の女性大統領候補となるか、メディアの注目度は高い。
トランプは、メディアの取材に対し、ヘイリーから電話があり、大統領選への立候補を検討していると伝えられ「やるべきだ」と助言したと明かしている。しかし、これは自分以外の立候補者が多ければ多いほど票が分散し、結果的に岩盤支持層を持っている自分が有利になるという計算の下の発言だ。
共和党の候補に関しては、トランプ人気が衰えを見せ始めてから、何人もの名前が挙がってきた、とくに、以下の6名は、出馬に意欲的と言われてきた。
○マイク・ペンスMike Pence(前米副大統領、64歳)
○マイク・ポンぺオMike Pence(元米国務長官、59歳)
○グレン・ヤングキンGlenn Youngkin(ヴァージニア州知事、54歳)
○ラリー・ホーガンLarry Hogan (メリーランド州知事、66歳)
○テッド・クルーズTed Cruz(テキサス州選出上院議員、52歳)
○ティム・スコットTim Scott(サウスカロライナ州選出上院議員、57歳)
さらに、ここにもう1人追加したいのが、共和党の女性政治家のなかでは穏健派と見られ、ディサンティスのライバルと目されているクリスティ・ノームだ。
○クリスティ・ノームKristi Noem(サウスダコタ州知事、50歳)
昨年の中間選挙で圧勝して、サウスダコタ州の知事に再選された。当選後、2024年の大統領選挙への出馬をほのめかした。トランプが指名された場合は副大統領候補になるとも。
ディサンティスが妊娠15週以降の人工妊娠中絶を禁止し、レイプや近親相姦の場合も例外としないとする法案に署名した際は、「彼は妊娠14週の胎児に生きる権利がないと考えているのか」と、厳しく批判した。共和党内では少ないプロチョイスだ。
世論調査ではディサンティスがリード
以上、2024年の大統領選挙を、下馬評に上っている候補者に絞って展望してみたが、バイデン、トランプの2人の高齢者が指名を獲得できないとした場合、若手、次世代の候補者がそろっているのは、民主党より共和党である。
その筆頭とされるのが、ディサンティスだ。
では、共和党がトランプvs.ディサンティスの争いになった場合、どちらのほうに可能性があるだろうか?
最近の世論調査では、ディサンティスがトランプを逆転している。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙が、昨年末に実施した世論調査では、共和党の予備選挙の有権者は、新星ディサンティスに期待感を持っていて、トランプよりも好意的に見ていた。
トランプとディサンティスの支持率を比較すると、非常に保守的だと回答した人の間では54%対38%とトランプが勝っていたが、やや保守的だと答えた人の間では59%対29%でディサンティスが大幅にリードしていた。
つまり、共和党支持者は、穏健派ほどトランプ離れを起こしている。
さらにはっきりしているのは、学士号・博士号取得のホワイトカラーの間ではディサンティスがリードしていて、トランプを支持しているのは、ほとんどがブルーカラーだということだ。両者の対立構造が、ディサンティスの登場でよりはっきりしたと言っていい。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。