日本人学校で学ぶということ
日本では2020年から小学校で英語が必修科目となった。大手英会話教室は0歳児からのクラスを開講し、都心のインターナショナルスクールには日本人の入学希望が殺到している。多くの家庭が英語教育に熱心に取り組んでいる。
NYに海外赴任で転居されたご家族は、我が子を現地校に通わせるか、または日本人学校に通わせるか大きな選択を迫られる。現地校ではENL教員の助けもあり、大人の予想をはるかに上回るスピードで子どもは英語を習得していく。そんななか、日本人学校は、長年ここNYで日本人家庭に大きな信頼を得ている。それは単に「日本語が通じる教育機関」というだけでなく、質の高い日本語と英語の教育を受けることができるからではないだろうか。
今回の企画では、実例を元に学校の魅力をさぐってみたい。
ニュージャージー日本人学校
世界に通用する人材の育成を目指し
日々教育活動を実践
一人一人を大切にするきめ細やかな指導を通じて、国際感覚豊かでグローバルな人材を育てています。少人数の良さを生かした指導のもと、生徒はアットホームな雰囲気の中、伸び伸びと生活しています。
ニュージャージー日本人学校は、『1 すすんで学習しよう 2 思いやりの心をもとう 3 健康な体をつくろう 4 アメリカ社会を理解しよう』という4つの教育目標の下、世界に通用するグローバル人材の育成を目指し、日々教育活動を実践しています。
その一つが、少人数学級によるきめ細かな指導です。少人数の場合、その場で疑問や質問を解決できます。“一人一人の発表・発言の機会が多い”⇒“表現力が向上”⇒“肯定感、有用感が高揚”というサイクルも生まれ、誰もが主役になることができます。
そして、小・中学生が同じ校舎で生活しているため、休み時間や行事を通じて小中連携(縦割り)活動が日常的に行われています。支え合い・学び合う習慣を通じて互いを思いやる気持ちや豊かな心が育ちます。
米人講師によるARTやESL、現地校との交流や校外学習等を通して、“英語で考え、英語で伝えあう”実践的な英語活用能力も育ちます。
また、初等部一年生より一人一台端末学習を実践しながら、ITCリテラシーの向上に努めています。
卒業後は、ほぼ全員日本国内の高等学校に進学するため、進路説明会(年3回)、進路相談、面接指導等を通じて個に応じた進路・進学指導にも取り組んでいます。
本校の児童・生徒の合言葉は、“我らNJファミリー”。これからも本校は、兄弟や家族のような関係を保ちつつ、あらゆるニーズに対応する、「誰にとっても居心地のよい学校」づくりを目指します。
教員インタビュー
日本の良さとアメリカの良さを融合させ
より良いものを目指していく
Q1. 日本での教員経験は?
23年間です。ニュージャージーでは2年で、合わせて25年です。
Q2. 専門分野は何ですか?
大学で、その当時「登校拒否」と言われていた不登校について興味をもち、保健体育分野のメンタルヘルスについて学び、教職についてから、教育臨床カウンセラーの資格を取りました。教科研究では、主に道徳、総合的な学習の時間(国際理解教育・SDGs)、英語・外国語活動の教材開発や授業実践に取り組んでいます。小学校専修、中高の保健体育、中学校の英語、特別支援の教員免許を持っています。
Q3. ニュージャージーで日本人に教育をする難しさを教えてください。
①児童生徒数の確保。本校に限って言えば少人数ゆえのメリットもかなり大きいと思いますが、ある程度の児童生徒数がいる方が学習の幅は広がると思います。
②アメリカのルールによって子どもの行動が制限され、自由に出歩けないため経験不足や運動不足を感じることがあります。
③教員間では、日本的な学習規律やマナーの指導について話題になります。日本の良さとアメリカの良さを融合させ、より良いものを目指していくことが課題です。
Q4. 日本語、英語教育の重要性を教えてください。
言語は他の人とつながるためのツールだと考えています。日本語と英語それぞれで自分の考えや気持ちを表現できることで、子どもたちの可能性が広がっていきます。また、多面的、多角的なものの見方にもつながっていくという点でも重要と考えます。
Q5. 日本に帰国したとき、日本の教育環境レベルに遅れを取らないために実践していることを教えてください。
今はオンラインでどこにいても学べるので、Zoomを活用し、日本で行われる研修会や私的な学習会(大学教授にご指導いただいているゼミ)に継続的に参加しています。日本にいる教員との交流によって教育現場の「今」を知ることができますし、小学校から大学まで様々な校種の教員の目で、自分の指導案や録画した授業を見てもらうことで、大きな学びを得ています。
卒業生紹介
自信を得られる環境で、
多くの成功体験ができた
卒業生:Dさん
在米期間:4 年半
受験経験:高校受験
年代:10 代
得意分野紹介:ダンス
Q1. 日本の学校授業との違いはどんなところでしたか?
一つ目は英語に関することで、小学校1年生から英語の授業があり、全学年を通じて英語の授業が多かったこと、また米国人教師によるESLクラスがあったことです。ESLクラスは学年ではなくレベル別に分かれていて、自分より学年が低くても流暢に話す子もたくさんいて、あんな風になりたいと刺激を受けることがありました。
また英語という言語だけではなく、ハロウィンやサンクスギビングなどのアメリカの文化、行事、アメリカ史、歴史上の人物についての学習も充実していました。
二つ目はどんな教科でも人前で発表する授業が多かった点です。人数が少なかったこともあり、選ばれた人だけではなく全員が発表する機会が多く、ICT機器を駆使したりプレゼンテーション方法を工夫したりしながら人前で話す度胸がつきました。またディスカッション形式で相手の意見も聞きつつ自分の意見をはっきりと主張する場も多く、とても勉強になりました。
三つ目は、生徒主体で物事を決める総会が多かった点です。例えば体育では課題や目標を自分たちで話し合って決め、ルールも生徒が相談し適宜調整することで、より自主性を育める授業となっていました。先生からの一方的な授業ではなく、先生と生徒がお互いにベストな方法で授業を展開できるのが、ニュージャージー日本人学校の強みだったと思います。
Q2. 日本に帰国して学校生活をおくるなかで、日本人学校で学んでよかったと思ったことは何ですか?
日本の学習指導要領に沿った内容をすべて学べたことで、高校に入学してからも学校の授業に遅れをとることなく勉強できている点です。特に国語や数学など、積み重ねが大事な教科は丁寧にご指導していただいたおかげで基礎が固まり、毎日の授業を楽しく受けることができています。
また、ESLの授業が充実していたのでリスニング・スピーキングの技能が上達しやすい環境だっただけでなく日本の英語の授業と同じように文法の授業もあったので、入試にも強くなれました。先生方は褒めて伸ばしてくれたので、自分に自信がつきました。英語が上達したとき、発表が上手くできたときなど、どんな小さなことでも褒めて下さったので成功体験を増やすことができました。そのおかげで渡米前よりも帰国してからの方がポジティブな発言が増え、委員会に参加したり、より積極的に行動できるようになりました。
Q3. 日本人学校で物足りないと感じたこと、またその対処方法はありますか?
正直に言うと私は日本人学校を選んだことにとても満足していて、特に物足りなく感じたことはありませんでした。強いて言うならば、人数が少ないため誰か一人がお休みするとクラスが寂しくなってしまうところです。しかし少人数だったからこそ団結力が強く、初等部・中等部の壁を越えて学校全体で仲が良かったので不満を感じたことはありませんでした。
保護者紹介
馴染みやすさと環境
高校受験を見据えて入学
Q1.日本人学校に決めた理由は何ですか?
大きく三点あります。一つ目は、娘が渡米にあまり前向きではなかったこともあり、環境が何もかも変わる中で、せめて生活の中心である学校生活は馴染みやすいところからスタートしようと、親子で話し合って決めました。また入学後に、環境や英語に慣れて本人が希望したら、現地校への転校という選択肢もあるかと考えていました。
二つ目は、一足先に渡米していた主人がニュージャージー日本人学校の運動会を見学させていただく機会があり、アットホームな雰囲気がとても良かったとの報告を受けていたことです。学校選択に迷っている場合には体験入学等、実際自分の目で確かめてみるのも良い方法かと思います。
三つ目は、日本での高校受験を考えていたので、学力維持の観点からも日本人学校が良いかと考えました。結果として、日本と同じ授業をきめ細やかに学習できただけでなく、英語教育が大変充実していて想像以上に英語が得意になり、日本人学校を選んだことに親子共々大満足しております。
Q2. 帰国や受験にむけて親御さんがサポートした具体例を教えてください。
・一時帰国の際には地元の学校に体験入学の形で通学させていただき、日本人学校とは異なる学校生活を子どもに経験してもらうようにしました。
・高校の学校説明会に、中学2年の夏の一時帰国時に出席し、早めに情報収集を行いました。
・インターネットで志望校の入試状況をこまめにチェックしました。必要があれば、メールや電話で直接質問させていただきました。
・日本から取り寄せる書類、或いは日本へ郵送する書類は郵便事情を考えて早め早めに準備しました。また日本にいる親族に事前に依頼する必要があるものの有無を確認し、そもそも受験が出来ないことのない様、書類関係には万全の注意を払いました。
Q3. 日本人学校だけでは足りないと思ったことはありますか?
現地校と比べると、どうしても現地の人々との交流は少ないと思いました。英語の授業が充実し、英語が得意な生徒も多かったので、現地校との学校間交流の場がもう少し多かったり、学校外に出てもっと英語を実際に使う機会があれば、更に英語力が向上するだけでなく、現地の生活を楽しむことに繋がるのではないかと感じました。
また、米国が自動車社会ということもあり、部活動がなかったことから、体力をつける機会が少なかったと思います。ただ、現地の人々との交流や体力向上などは、地域ボランティアへの参加や現地スポーツクラブに所属するなど保護者側でサポートできることでもあり、日本人学校に通いながらも実現は可能かと考えます。
進学先学校紹介
青山学院高等部
青山学院は、キリスト教信仰に基づく教育を行う幼稚園から大学院までの総合学園です。高等部は、1950年に共学の高校として開設されました。帰国生入試を実施している本校には、様々なバックグラウンドを持つ生徒がいて、一人一人が自分の興味関心に即した学習を深められるよう、幅広いカリキュラムを備えています。特に英語は、少人数クラスで個々のレベルに応じた教育を行い、ネイティブ教員の担当する科目も多くあります。青山学院大学の教員から専門分野を学べる学問入門講座を実施しているほか、実際の大学の授業を履修できる制度もあります。国際交流や平和・共生教育にも力を入れ、姉妹校である英国やイタリアの学校との短期交換留学、夏休みのカナダ・ホームステイ、フィリピン訪問プログラムや東ティモールスタディツアー、東日本大震災の被災地宮古市への訪問プログラムも実施しています。自由な校風のもと、生徒会活動も盛んで、バレーボール大会や文化祭などの行事は特に盛り上がります。
なお、卒業生の約85%は、内部進学制度で青山学院大学へ進学しています
ニュージャージー日本人学校
Tel 201-405-0888
117 Franklin Ave, Oakland, NJ 07436 https://newjerseyjapaneseschool.org/