連載997 カーボンニュートラルで、 やがて中国が一人勝ちするという「悪夢」 (中)

連載997 カーボンニュートラルで、 やがて中国が一人勝ちするという「悪夢」 (中)

(この記事の初出は2023年4月11日)

 

世界でダントツの中国のCO2排出量

 いまや地球温暖化対策は、待ったなしである。そのことをいちばん認識して対策に当たっているのが欧州であり、バイデン米政権だ。日本にはまったく、危機感がない。
 問題は中国だが、最近の動きを見ていると、どうやら本気で取り組むようになってきた。かつては、 COP(気候変動枠組条約締約国会議)において、CO2の排出削減に頑強に抵抗してきたが、いまや協力する姿勢を見せるようになってきた。
 次は、現在の世界の国別CO2排出量ランキングである。

世界のCO2排出量 国別ランキング(2021年)
          (単位:100万トン、出典:BP)
1位 中国 10,523.03
2位 アメリカ 4,701.11
3位 インド 2,552.83
4位 ロシア 1,581.34
5位 日本 1,053.70
6位 イラン 660.51
7位 ドイツ 628.89
8位 韓国 603.76
9位 サウジアラビア 575.33
10位 インドネシア 572.47

 これを見れば、中国がダントツの1位であるのは一目瞭然である。2位のアメリカから5位の日本を合わせた量より多い。
 つまり、COPが目標としている「気温上昇を1.5度以内に抑える」の達成には、中国の努力が絶対に欠かせない。
 この目標を達成するために、2021年11月の「COP26」(英国グラスゴー)では、主に次の4点が合意された。
(1)石炭の段階的廃止の加速、(2)森林破壊の削減、(3)電気自動車への切り替えの加速、(4)再生可能エネルギーへの投資奨励
 このどれにおいても、中国が努力が必要不可欠なのである。
 現在(2022年末)、世界では日本を含め154カ国・1地域が、「2050年カーボンニュートラル」を表明している。ただ、中国は10年遅れの「2060年カーボンニュートラル」である。それでも、世界と足並みを揃えてきたことは大きい。
 なぜ、中国は地球温暖化に対する取り組みで、これまでの方針を変更したのだろうか?

突然の「2060年カーボンニュートラル」表明

 中国が「2060年カーボンニュートラル」を表明したのは、2020年9月の国連総会だった。習近平主席は、「2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ、2060年までには実質ゼロにする」と宣言したのである。
 そうして、この目標達成に向け、石炭火力発電所の操業を順次停止していくことも表明した。
 それまでの中国は、COPにおいて、途上国が先進国と同じ排出量削減の負担を強いられるべきではないという主張を続けてきた。自らを「途上国」であるとして、温暖化対策の費用捻出が容易でない途上国側に立ち、欧米先進国と対立してきた。
 ところが、「2060年カーボンニュートラル」宣言は、この方針の突然の変更であるから、世界は驚いた。
 なぜ、中国は方針を変更したのだろうか?


(つづく)

 

この続きは5月11日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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