連載1013 「五公五民」は? 本当は「六公四民」!
「国民負担率47.5%」というマヤカシ (中2)
(この記事の初出は2023年5月9日)
所得税+住民税で55%というボッタクリ
日本の税金には、このようなカラクリがあるうえ、税金そのものも高い。たとえば、所得税は最高税率で見ていくと、日本は世界でもっとも高いほうの部類に入る。日本の最高税率は45%、であり、住民税10%と合わせるとなんと55%にもなる。
次に、主要国の最高税率を高い順に記してみる。
スペイン52%、イギリス50% 、ドイツ、フランス、オーストラリア45%、アメリカ35%、カナダ29%—–。どうだろうか。世界には、オフショアもあり、シンガポールは20%、香港は17%と低く、ケイマン諸島は所得税そのものがない。
次の[図表26]が、日本の所得税の税率(国税庁データ)である。所得が高い人ほど税率が高くなる「超過累進課税制度」が取られていて、1800万円を超えると40%、4000万円を超えると45%が課せられ、これに住民税10%が加わる。
単純な話、日本のサラリーマンは年収1800万円以下までにしておいたほうがいい。それ以上稼ぐとどんどん取り上げますと、国は言っているわけだ。
[図表22]所得税の税率
https://foimg.com/00065/NANRjR
相続税を廃止すれば問題は解決する
相続税もボッタクリである。相続税にも所得税と同じように金額に応じて課税するという制度があり、これを動かすことで簡単に増税できる。
実際、相続税は2015年年1月1日から税率が引き上げられ、最高税率が55%になった。また、基礎控除額の改正も行われ、それまで5000万円だった定額控除が3000万円と、なんと4割も引き下げられた。控除額の引き下げは増税である。
じつは、相続税は、はもともと、その課税根拠が希薄な税金だ。なぜなら、私たちは所得があればその一部を所得税というかたちで国に納めている。そして、残った所得で資産を形成する。たとえば土地・建物を購入すれば、そのときに不動産収得税などを払い、さらに、毎年、固定資産税を納める。株や債券に投資しても、それから得られた利益に対してはキャピタルゲイン税を納めている。
こうしてさまざま税金を払ったうえに残った資産に、所有者が死んだという理由だけで課税するのが相続税であり、これは、明らかな「二重課税」「三重課税」ではなかろうか。
いまや多くの国で相続税は廃止されている。カナダとオーストラリアは1970年代に廃止。1992年にニュージーランドが続き、高福祉高負担で知られるスウェーデンも2004年に相続税を廃止した。また、イタリア、インド、中国、タイ、マレーシア、インドネシアなどは、そもそも相続税がない。
相続税があり、それが高率だということは、世代を超えて富が蓄積されないということを意味する。美智子上皇后の実家の正田邸は、相続税のために物納されて解体されてしまった。街の景観まで変わってしまうのだ。
相続税は、結局、国家にだけ富が集中し、民間は疲弊するという税金である。
もし、相続税がなければ、日本が直面している多くの問題は解決する可能性がある。たとえば、現在多くの中小企業が悩んでいる「事業継承」がスムーズに行えるようになる。また、解体が進む家族もその絆が深まることで元に戻る。さらに、少子化や老老介護などの問題も解決に向かもしれない。
(つづく)
この続きは6月5日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。