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共同通信
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ドシラ、ドシラ―。印象的な音列を繰り返し、世にインパクトを与えた映画「ゴジラ」(1954年)のテーマ曲を手がけた作曲家の伊福部昭さん(2006年死去)。伊福部さんが映画公開の約20年前、19歳で書いたとみられる未完成の楽譜に、ゴジラの曲を象徴した音列が多く登場していたことが、弟子でソプラノ歌手藍川由美さん(67)による楽譜の校訂で判明した。
藍川さんは「伊福部音楽の原点に触れる大きな発見」と語る。
楽譜のタイトルは「平安朝の秋に寄する三つの詩」。伊福部さんが日本の音楽の伝統的な手法を生かし、小野小町らの和歌に曲を付けた。藍川さんが全90小節を校訂し、音符や歌詞の欠落や書き間違いを修正したところ、ゴジラの曲に登場する「ラシド」が47回、「ドシラ」が30回、循環するように配置されていた。
楽譜は、独学で作曲を学び、旧北海道帝国大生だった伊福部さんが1933年、札幌を訪れていた声楽家の荻野綾子さんに献呈するために慌てて書いたとみられる。2007年に東京芸術大付属図書館で見つかった。