連載1014 「五公五民」は? 本当は「六公四民」! 「国民負担率47.5%」というマヤカシ (下)

連載1014 「五公五民」は? 本当は「六公四民」!
「国民負担率47.5%」というマヤカシ (下)

(この記事の初出は2023年5月9日)

 

ほとんど機能していない「租税法律主義」

 それにしてもなぜ、日本は重税国家になってしまったのだろうか?
 日本国憲法第84条は《あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする》と定めている。
 これは、いわゆる「租税法律主義」というもので、課税はすべて法律改正によりなされるという規定だ。
 ところが、日本の税金は、実質的に政府与党の「税制調査会」(内閣総理大臣の諮問機関)が官僚と結託して勝手に決めてしまい、国会は単にそれを承認するだけとなっている。つまり、自民党が与党として長期間政権の座についてきた弊害である。
 この弊害をメディアは批判しない。「忖度」を繰り返し、こと増税に関しては、与党と財務省が言うがまま、「福祉を維持するには増税はやもうえない」「まだ増税の余地がある」などと、これまで言ってきた。
 ともかく、増税して「大きな政府」を続けていくというのが、官僚主導の日本政府(=役人天国)の在り方である。そして、そういう政府がもっとも上げたい税金が消費税だった。
 税金には税金の負担者と納付者が一致する「直接税」と、税金の負担者と納付者が異なる「間接税」がある。直接税の代表的なものが法人税や所得税で、相続税や固定資産税などもこれに当たる。これに対して、酒税やたばこ税、揮発油税、印紙税などが間接税で、その代表が消費税である。
 間接税の最大のメリットは、取りはぐれがないことだ。

消費税増税が経済の足を引っ張った

 消費税は、2014年4月に5%から8%へ、2019年10月に8%から10%へと引き上げられた。この2回の増税は、民主・自民・公明の3党合意の下に行われたものだから、民主政治である以上、国民の意思だ。しかし、日本経済の足を完全に引っ張った。
 消費税は、1989年、バブル最後の年に新設され、税率3%で導入された。その結果、この年と翌年の1990年の税収は上がったが、翌々年から経済は失速した。これは、バブル崩壊に加えて消費税の導入によって消費が低迷したからだ。以後、日本は長期不況に陥った。
 1997年、消費税は3%から5%に引き上げられた。このときも、その年の税収は上がったが、翌1998年にすぐに失速している。
 これは、じつに簡単なパターン認識である。「消費税を上げると1~2年は税収が上がるが、その後は下がる」ということだ。それなのに、当時の安倍政権は“地雷を踏む”ことを選んでしまった。
 消費税増税の理由の一つとして言われたのが、「日本の消費税の税率は欧州諸国に比べてまだまだ低い。だから増税の余地がある」というものだった。
 しかし、これは真っ赤なウソだった。
 たしかに、欧州諸国の付加価値税(VAT)は高率で、当時もっとも高いハンガリーが27%、次いでアイスランドが25.5%、クロアチア、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーが同率で25%となっている。さらに、フランス19.6%、ドイツ19%、イギリス17.5%だから、日本の8%に比べたら高いのは間違いなかった。
 しかし、欧州諸国は食料品など生活必需品には軽減税率を導入して、税率を低く抑えていた。たとえばイギリスでは食料品、?医薬品などの税率はゼロであり、フランスも医薬品は税率2.1%でしかない。?アイルランド、オーストラリアなども食料品の税率はゼロだった。
 そこで、政府は日本も軽減税率を導入し、食料品などの税率は8%に据え置いた。しかし、この8%ですら、すでに十分に高く、日本経済は大きく失速した。それなのに、政府内には、今後さらに税率を上げようとする動きがある。

(つづく)

 

この続きは6月6日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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