連載1024 サラリーマン社会崩壊! 「人材流出国」「移民輸出国」になったニッポン (完)

連載1024 サラリーマン社会崩壊!
「人材流出国」「移民輸出国」になったニッポン (完)

(この記事の初出は2023年5月23日)

 

従来のサラリーマン社会は崩壊する

 日本が「人材流出国」「移民輸出国」になりつつあるという現実は、これまで当たり前に続いてきた日本のサラリーマン社会が崩壊するということを意味している。
 つまり、日本企業も、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ、「年功賃金」から「成果主義」「高額報酬制度」に、ついに転換せざるをえないということだ。これまでのように、いったん正社員として会社に「就社」し、そこでルーティンなサラリーマン生活を送るという人生は成立しないということだ。
 ということは、職業に就く前の段階、教育も大きく変わらざるをえない。これまで、日本の会社が求めてきたのは、従順に働く平均人材だった。しかし、デジタルエコノミーのこの時代、毎日会社に出勤してきて机に向かって仕事をする平均人材はもう必要ない。
 必要なのは、それぞれのスキルを持ったスペシャル人材である。
 しかし、いまの日本の教育はそれに応えられない。私は、これまで、日本の学校に通うと将来を失うと言い続けてきたが、ついにそれが現実になろうとしている。

日本の教育では「平均人間」にしかならない

 日本の学校教育は、常に「苦手科目を克服する」ことに重点が置かれている。これを読まれている方も経験したと思うが、教師たちは受験科目のどれにもいい点を取らせようとする。
 一つの科目に飛び抜けて得意な子供は敬遠される。その得意な部分をもっと伸ばそうなどとはしてくれない。これが小学校から高校まで続くので、その間に、子供たちは可もなく不可もない「フツーの人間」にされてしまう。
 最近聞くのは、せっかく小学校で英語が必修化されたというのに、中学生の英語力がかえって落ちているということだ。英語を授業としてやるだけで、英語力がつくというお馬鹿な考え方を文科省も教師たちもしている。
 それよりも、数学が得意、理科が得意などという子供に、それを英語で教えれば、英語力も自然に身につく。要するに数学や理科の授業を英語ですればいい。
 コンピュータは英語で成り立っているのだから、なおさらだ。
 生成AIが一気に世界を席巻しようとしているこの時代、いったい、日本の教育はなにをやっているのだろうか。今後、多くの分野がAIに置き換えられるとしたら、日本の教育で育った人間は不要人材になりかねない。
 若者は、この国に止まったら、世界からどんどん遅れ、貧しくなるだけだ。海外に出て、将来“ガラパゴス日本”が変わったときに、この国に戻ってくる。そういう生き方をすべきだと、私は思っている。

(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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