連載1032 日本外交が見事にハマった 「グローバルサウス」支援という時代錯誤(中)

連載1032 日本外交が見事にハマった
「グローバルサウス」支援という時代錯誤(中)

(この記事の初出は2023年6月6日)

 

なぜグローバルサウスに飛びついたのか?

 ここで、国連総会決議を振り返ると、ウクライナ戦争によって世界が、白、黒、グレーの3つに分断されたことがはっきりする。ウクライナを支援する米欧諸国(白)、ロシアとその同盟国及び支援国(黒)、そしてロシアを非難せず制裁に参加しない国々(グレー)。
 つまり、グレーのグローバルサウスを取り込まないかぎり、西側のロシア制裁は利かない。ロシアを弱体化させることはできない。また、ロシアにとっても、グレーのグローバルサウスは、今後の国家存続のためには必要不可欠な存在なのである。
 この状況を見て、G7を控えた日本政府、外務省が、日本外交の主軸と考えたのが、グローバルサウスへのアプローチだった。アメリカの属国として、ウクライナ戦争で完璧に西側サイドに立った以上、「こうすることがもっとも日本らしさが出せる」(外務省のある幹部)と考えたのだという。
「欧米は白人国家。グローバルサウスはほとんどが非白人国家。この点で、非白人国家の日本は有利です。欧米とグローバルサウスとの間を取り持てば、アメリカも喜ぶし—-」
 とまあ、このように考えたのだという。

グローバルサウスとの橋渡しが日本の役目

 2023年が明けてすぐ、インドは途上国によるオンライン会合を開いた。インドはG20の議長国という立場を利用し、世界120カ国に参加を呼びかけた。このオンライ会合のタイトルは、なんと「グローバルサウスの声サミット」。
 インドは、ウクライナ戦争などの影響による食糧危機、インフレなどで、「グローバルサウスが痛みを感じている」と世界に訴えた。
 このインドのメッセージをまともに受け取って、これは日本の出番だと、岸田首相は3月にインドを訪問し、モディ首相と会談した。そうして、「日本とインドとの特別戦略的グローバル・パートナーシップのいっそうの深化を確認した」と、アピールした。
 この訪問で、岸田首相はモディ首相を正式にG7広島サミットに招待した。
 GWは日本の首相、閣僚にとって「外遊」の季節。今回、岸田首相が選んだのは、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークというアフリカ4カ国の歴訪だった。その日程は1週間。
 最終日のモザンビークで、岸田首相は同行の日本の記者団に対する会見で、次のようなことを強調した。「グローバルサウスの多くは食料品高やエネルギー高に苦しんでいる。日本に求められているのは目に見えるかたちでの主要7カ国(G7)による積極的な協力を示し、G7とグローバルサウスとの橋渡しを行い、法の支配を貫徹することだ」
(つづく)

この続きは6月29日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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