連載1043 NYも東京も株価上昇が止まらない。
しかし、もうパーティを切り上げるときでは? (下)
(この記事の初出は2023年6月20日)
“適温相場”はもはや限界ではないか?
以上のことから、ここでとりあえず述べておきたいのは、“適温相場”は、もうこれ以上続かないのではないかということだ。“適温相場”=“ゴルディロックス相場”(3匹のくまの例え話から命名された相場で、高値が続くこと)は、コロナショック前まで、ずっと続いてきた。それがいったん、コロナショックで暴落した。
これは、コロナのパンデミックが引き金を引いただけで、ゴルディロックス相場というバブルの崩壊だった。
しかし、その後、FRB、ECBをはじめ世界中の中央銀行が大規模な金融緩和をし、世界中の政府が給付金をばらまいたので、株価は急反転してゴルディロックス相場に逆戻りした。それが、金融緩和を止めても、いまもなお続いているのだ。
要するに、バブル崩壊は政府による次のバブルで先送りされたのである。FRBもECBも金融緩和を止めて引き締めに転じたが、まだ、緩和の余韻が残っている。現在は、そういう状況だと思える。
ただし、もう“適温相場”は限界ではないかと思える。
日経平均上昇を裏付ける経済はあるのか?
NYの適温相場が限界と思えるのは、NY株のここ1年間の推移を振り返えるとわかってくる。
NYダウは、コロナ禍がほぼ2年経過した2021年暮れ、市場最高値の3万6331ドルを記録した。以来、ここがピークでだらだらと下げ、2022年9月には2万8725ドルまで下がった。しかし、そこから反転し、じわじわと上がって11月には3万4589ドルに達した。そして2023年となり、1月2月は3万3000ドル前後で推移し、現在も同じレンジで推移している。
アナリストのなかには、「まだ上昇は間違いない。金利上昇時は株は買いだ」と、経済学のテキストと逆の見方をする向きもあるが、取引はじょじょに軟調化している。
一方、日経平均は、NY株とほぼ相似形で値動きを繰り返してきたが、ここ半年の上昇は明らかにバブルだ。ドル換算ではそれほどではないとしても、円では6000円ほども上がっている。コロナショック後のピーク、2021年9月の2万9452円からも4000円も上がっている。
そこで、聞きたい。日本経済と、日本企業に、この株価上昇を裏付けるものがあるのかと。私が知る限り、日本企業にそれはない。トヨタはEV転換が遅れ、今後、大きく業績を落としそうだ。日本のものづくりの象徴、三菱重工は飛行機に続いてロケットでも失敗し、技術空洞が浮き彫りになっている。
(つづく)
この続きは7月18日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。