日本人コミュニティを彩る人々 金義桓(キム・ウィファン)

創刊20周年特別企画
日本人コミュニティを彩る人々

ニューヨークの日本コミュニティは、歴史的に日本人・日系人を支援しようとするはかり知れない苦節や活動から、今日の平和な生活を手にした。それを維持するために今も働き続ける人々にスポットライトをあててみた。

 

在ニューヨーク大韓民国総領事
金義桓(キム・ウィファン)

 

金義桓(キム・ウィファン)

韓国政府において様々な要職を歴任。ニューヨークには2017年から19年、国連開発計画における汚職防止シニアアドバイザーとして赴任。22年12月より、現職で2度目の赴任。高麗大学校にて社会学学位、オハイオ州立大にて公共政策学修士を取得。日本に対する造詣も非常に深い。(写真:韓国総領事館提供)

将来をみすえた日韓関係へ
ニューヨークでのコミュニティの結びつき強化を

 

―早速ですが、現在の日韓関係をどのようにお考えですか?
キム総領事「はじめまして(日本語で)。まずは、日本と韓国の関係が、両国内だけでなく、海外においても、改善していることを非常にうれしく思います。両国は、距離的に非常に近いだけでなく、文化的にもとても近く、さらには地政学的、経済的観点も踏まえると、それぞれの今後の永続的な発展のために、関係をより一層強固なものにしていくことが重要であると考えており、昨今の関係改善は喜ばしいです」

 

―両国では感情的な摩擦がときにうまれたりもしますが、それも考え方、興味が似ていて、距離が近いことにもよるのでしょうね。子供たちの兄弟げんかに、似ていますね。ニューヨークにおける日韓関係に関してはいかがですか?
「 私自身も、日韓関係の強化は非常に需要であると考えており、ニューヨーク総領事館に大使として赴任後、最初にお会いしたのが在ニューヨーク日本国総領事館の森美樹夫大使でした。当初は、10分ほどの表敬訪問のつもりだったのですが、話題は、国際情勢、民主主義の役割、経済・文化面など多岐におよび、いつのまにか80分の会談となるなど、初対面から非常に有意義な時間を過ごしました。その後森大使も韓国総領事館を訪問されるなど、大使同士の友好関係を深めています」

「森大使のニューヨークにおける経験では、ニューヨーク・メッツでの始球式がうらやましいですね。大リーグで日本人の活躍が目覚ましいですが、もう少し韓国人選手にも活躍してもらい、私自身も始球式ができるようになればいいですね」

森美樹夫・日本国総領事・大使(右)とキム総領事(韓国総領事館提供)

 

―今後のニューヨークにおける日本、韓国のコミュニティにおいては、どのような活動をお考えですか?
「領事館同士の関係だけでなく、ビジネス界や民間など幅広いレベルで、ニューヨーク界隈における日韓コミュニティの連携をより一層深められればと思っています」

 

― ビジネス界においては、どのような連携をお考えでしょうか?「両国にとって、アメリカ市場の重要性はますます高まる一方で、連邦や州レベルにおける政治状況、規制環境なども刻々と変化しており、規制・商習慣の違いなどから、アメリカ国内における進出先での様々な課題も出てきています。今後ますます両国からアメリカへの企業・工場進出が進むと考えられます。また、両国のビジネス慣習や考え方などは、世界的なレベルでも非常に似ていますので、これらのアメリカにおける課題に関しても、両コミュニティがより協力することで、ビジネスにとってもよりよい成果が出せるのではと考えています」

 

―民間レベルにおいては、どうでしょうか?
「両国コミュニティが協力することで、お互いのアメリカ生活をより豊かにできるものと思っています。例えば、コロナ禍のニューヨークにおいては、不幸なことに 、“アジア・ヘイト・クライム”が問題となりました。ただ、アジアと言っても、日本、韓国から、インド、サウジアラビアにかけて地理的にも非常に広大で、文化・習慣も大きく異なりますので、その括り方自体に無理があると思います。その“アジア”において、人数的に考えると、日本、韓国それぞれのコミュニティはマイノリティですので、お互いに協力し合うことで、ニューヨークにおける暮らしをより豊かにできると思います」

 

―最後に、今後の大使ご自身の日本コミュニティとの関わりについてもお聞かせください。
「日韓両国は、民主主義を含めて、多くの価値観を共有しています。大きく揺れ動く世界情勢のなかで、隣国でかつ多くの価値観を共有するお互いの関係強化は、非常に重要だと考えています。ニューヨークにおいても、大人だけでなく、次世代の子供たちにもつながるような、将来を見据えた関係強化を、幅広い分野で行っていければと考えています」
「韓国も日本から多くのことを学びましたし、現在日本の若い人がK-POPやK-Foodを通じて、韓国に親しみを持ってくれているのも、両国関係にとって喜ばしいと思います」
「私自身、大使という役割上、いろいろな機関や学校でお話しさせていただく機会がありますが、今後は在ニューヨークの日本人学校なども訪問させていただき、より幅広い交流ができればと思っています」

(文 武田秀俊)

キム総領事(左)と聞き手(韓国総領事館提供)