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共同通信
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100年前の関東大震災で、流言を信じた自警団や軍隊が引き起こした朝鮮人虐殺に向き合う在日コリアン3世の女性がいる。現代美術家の金暎淑さん(49)=東京都目黒区。「殺される側」の自分と日本社会との摩擦を恐れて目を背けてきたが、作品作りを通じ、虐殺の史実について継承に臨む日本人の存在に希望を感じた。「事実そのものを見つめたい」と話す。
福島県郡山市で生まれ育ち、日本で暮らしてきた。周囲の日本人とは良好な関係だが、数年前からインターネットで韓国、朝鮮人らへの排外的な言説が目立ち始め、ヘイトスピーチが横行するなど息苦しさを感じてきた。関心はあったが、深く学ばなかったのは、歴史を知ることで今の日本社会に対してどのような気持ちを抱くか分からず、怖かったからだ。
転機は今春。虐殺をテーマにした作品展への出品が決まり、住民らの証言を集めた本を読んだ。荒川に架かる旧四ツ木橋付近などでは多数の朝鮮人が軍隊に射殺されたり、川に投げ込まれたりしたことを知った。「なかったことにはできない」と思った。