連載1065 できるわけがない地方創生:
支援金、補助金で「移住促進」という超愚策 (中)
(この記事の初出は2023年8月1日)
財源は全国トップクラスのふるさと納税
よくよく考えてほしい。都城市の昨年の移住者は435人である。これで、今後20年で約4万人、年間約2000人の人口減少が防げるはずがない。
しかも、彼らが定住するという保証はどこにもないのだ。
都城市がこれほど手厚い移住支援ができるのは、全国でトップクラスのふるさと納税受入額があるからだ。宮崎牛、地鶏、焼酎などが人気で、その額は毎年140億円ほど。
これを都城市は、惜しみもなく移住促進政策につぎ込んでいるのである。
以下が、2022年度のふるさと納税受入額ランキングのトップ5自治体だ。
1位:北海道紋別市152億9700万円。
2位:宮崎県都城市146億1600万円。
3位:北海道根室市146億500万円。
4位:北海道白糠町125億2200万円。
5位:大阪府泉佐野市113億4700万円。
そして次が、ふるさと納税により住民税の税収額が減った自治体のワースト5だ。
1位:横浜市230億900万円。
2位:名古屋市143億1500万円。
3位:大阪市123億5900万円。
4位:川崎市102億9100万円。
5位:東京都世田谷区83億9600万円。
ふるさと納税というのは、全国規模で見るとまったく意味のない税制だ。なぜなら、本来どこかの自治体に入るはずの税金がほかの自治体に移るだけで、全国規模での税額は変わらないうえ、そこから返礼品や事務処理費用が差し引かれてしまうからだ。
私は、ふるさと納税によって全国一税金を減らされた横浜市に住んでいるので、私が払った税金のなにがしかが私とは縁もゆかりもない地方の移住者の手に渡っていることに憤慨している。
移住支援金、家賃補助など豊富なメニュー
それにしても、規模はどうであれ、都城市と同じような移住促進策を行っている自治体の多さに驚く。地方は、人口減恐怖症にかかっているとしか思えない。
移住促進策といってもさまざまで、移住支援金、引っ越し支援金、家賃補助、土地購入支援金、リフォーム補助金、子育て支援金など、よくもまあ、税金のバラマキの名目を考えるものだと感心する。
以下、目ぼしいものをいくつか拾ってみた。
《熊本県益城町》
住宅を新築・または購入した移住者に1年目に50万円、3年目に50万円を支給する。
《北海道標津町》
80平米以上の住宅の新築で建築工事費の10%を補助(最大200万円)。町内の業者を利用すればさらに50万円、新規移住者に50万円の最大合計300万円が支給される。
《宮城県七ヶ宿町》
40歳以下の夫婦で中学生以下の子どもがいる家庭が対象で、新築の木像2階建て住宅を月額3万5000円で貸し出し、20年後には土地・住宅をそのまま支給する。
《石川県穴水町》
20歳以上40歳以下の夫婦で、一戸建てを新築して定住を希望した場合、無償で土地を支給。
《岐阜県郡上市》
55歳以下で市内の企業に就職した移住者には、1か月最大2万円を3年間補助する。
《京都府舞鶴市》
漁業に従事する目的で移住をし、空き家を購入する場合、上限180万円を補助。
《鳥取県日南町》
農業技術の習得を目的として最長2年の研修期間中、給料を支給。住宅の斡旋や空き家の助成制度も完備。
《山口県萩市》
農業を志して移住する人間には、月額2万5000円で住居を用意。また、農業を始める前の研修費や、開始してから経営が安定するまでの間の生活を支える助成金も用意。
(つづく)
この続きは8月30日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。