連載1073 マアワビ、サケ、カキ—-などが食卓から消える! 海の中でも進む地球温暖化の深刻度 (中1)

連載1073 マアワビ、サケ、カキ—-などが食卓から消える!
海の中でも進む地球温暖化の深刻度 (中1)

(この記事の初出は2023年8月22日)

 

もはや「温暖化」ではなく「沸騰化」

 大規模な山火事、異常高温、干ばつ、集中豪雨、大洪水、台風の大型化——などの気候変動は、みな人為的な地球温暖化が招いたものだ。
 今年の異常気象の多発ぶりを見ると、あと10年も経つとどうなるのか?と不安になるが、個人としてはなにもできない。現在進行中の事態を憂いながら、温暖化対策に真剣な政治家に対して選挙権を行使し、同じく真剣な企業に投資することぐらいしかできない。
 それにしても、もはや「温暖化」を通り越して、地球の気候は人類史のなかで未知の領域に入っている。
 先ごろ、国連のグテーレス事務総長は、「温暖化の時代は終わって沸騰化の時代がやってきた」(the era of global warming has ended and the era of global boiling has arrived.)と、世界に対して警告した。 そして、「異常気象がニューノーマル(新常態)になりつつある」と述べた。
 事務総長の警告の矛先が向かっているのが、先進国である。COP(気候変動枠組条約締約国会議)では、先進国は途上国の防災強化などに年1000億ドルを拠出することが決められているが、グテーレス事務総長は「いまこそ、その約束を守るべきだ」と訴え、こう付け加えた。
「G7でドイツとカナダ以外は拠出目標を達成していない」
 もちろん、日本は達成していない“先進国”の1つだ。

アワビ、サザエが獲れず「海女漁」が消滅

 つくづく思うが、日本のメディアは温暖化に対しての危機感が薄く、これまで警告を発するような報道をしてこなかった。とくにテレビは、異常気象を「異常」「記録的」「これまでにない」と繰り返すだけで、地球温暖化危機を詳しく報道しない。
 マウイ島の山火事は、ハワイが日本人に馴染みの観光地だけに大きく取り上げたが、それ以上に自国で起こっていることをもっと報道すべきだろう。
 日本は島国で、周囲を海で囲まれている。そのことを考えると、夏の高温以上に深刻なのが、海水温度の異常な上昇だ。温暖化は陸上だけではなく、海中でも起こっていて、その影響で、いま日本の漁業は危機に瀕している。
 その典型例の一つが、日本の伝統文化とも言える「海女漁」(奈良時代から続いている)が消滅寸前になっていることだろう。いまや、いくら潜ってもアワビやサザエなどは獲れなくなっている。
 たとえば、三重県の鳥羽、志摩両市は、国内でもっとも海女漁が盛んなところだが、最近は海の中の状況が変わり、潜ってもなにも収穫がない日があるという。
 私は三重県の地方紙『伊勢新聞』に寄稿しているので、三重県で起こっていることはとくに気になる。県によると、戦後の最盛期には6000人以上いた「海女」は、いまでは全県で500人以下だという。


(つづく)

この続きは9月12日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。