連載1075 マアワビ、サケ、カキ—-などが食卓から消える!
海の中でも進む地球温暖化の深刻度 (中3)
(この記事の初出は2023年8月22日)
サケが獲れなくなってしまった三陸
暖流である黒潮の蛇行と北上で、近年、日本沿岸の海水温は上がり続けている。その影響を大きく受けているのが、三陸でのサケ漁である。
2023年5月28日の「朝日新聞GLOBE」の記事によると、三陸漁業の中心地である釜石では、サケ漁は最近では1日に100匹を超えればいいほうで、まったく獲れない日もあるという。
サケの漁獲量の減少を危惧して、釜石漁協ではサケの人工ふ化場をつくり、そこでふ化した稚魚を海に放している。
しかし、ふ化場長の佐々木有賢氏は、記事中でこう言っている。
「川を上ってくるサケが少なく、十分な数の卵が手に入らない」「三陸に帰ってくるサケの数は激減し、壊滅的といえる状況です」
そのため、ふ化に使う卵の一部は北海道などから運び込んでいるという。
生息の適温5℃~13℃水域が北に移った
いまスーパーでは、三陸産のサケをほとんど見かけなくなった。北海道産のサケも同じだ。スーパーにあるのは、ロシア産、ノルウエー産、アラスカ産、アルゼンチン産のサーモンばかりだ。
マスを含めたサケ類の生息は、水温によって大きく左右される。一般的にサケには水温5℃~13℃がもっとも適しているとされるので、三陸や北海道は、海水温の上昇とともにサケの生息に適さなくなってしまったのだ。
これは太平洋をはさんで反対側に位置するカナダのブリティッシュコロンビア州も同じで、2000年代になるとサケの漁獲量は極端に減ってしまった。
それと対照的なのが、緯度が高いアラスカで、逆に漁獲量は増えている。同じく、緯度の高いカラフトを含むロシアでもサケの漁獲量は増えている。
もともと高緯度のロシア沿岸は、海水温が低すぎてサケの生息には適さなかったが、2000年代に入ると、適水温の5℃~13℃になったのである。
2015年以降サンマは記録的な不漁続き
サケと同じくサンマの漁獲量も激減している。サンマ漁業者の団体の一つ「全国さんま棒受網漁業協同組合」によると、2022年、全国の港に水揚げされたサンマは1万7910トンで、記録の残る1961年以降でもっとも少なかった。これは、豊漁だった2008年の34万3225トンと比べると、なんと5%にすぎない。
サンマの漁獲量は2000年以降、年間20万~30万トンで推移していたが、2015年以降、急速に減少した。その結果、千葉の銚子港は、かつてサンマの水揚げで全国1位を記録したことがあったが、なんと2022年は「ゼロ」になってしまった。
当然だが、獲れなければ値段は上がる。いまやサンマは高級魚になってしまった。
『水産白書』によると、全国の主要な漁港でのサンマの卸売価格の平均価格は、2006年は1kgあたり70円だったが、2021年は627円に値上がりした。なんと約9倍である。
(つづく)
この続きは9月14日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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